24話 理解
入院生活も3日目になり、足の感覚は薄いもののフラつきながらは歩けるようになった。
歩ける姿を見せて退院させてくれと頼み続け、やっと退院できるようになった俺はシズキとトモキに送ってもらって家に帰ってきた。
ちなみに女装の道具なんかはシズキが俺の家に送ってくれていた。
「そういえば、アイちゃんとサクラちゃんと男子達、救急車で運ばれていくマコを見て心配してたわよ」
「そっか、悪いな」
「このマコトが今から可愛い子に変身するのか」
シズキとトモキに見られながら女装していく。目の前でマコに変身する姿を見せてほしいと頼まれたのだ。
顔に化粧し始める当たりからマコが俺の中に入ってくる。
「ほら、顔変わってきたでしょ?」
「すっごい。あっという間に変わっていくわね」
「元が美形なだけあって凄いなぁ、驚いた」
シズキとトモキも素直に驚いている。そんなリアクションを見て俺は満足そうに笑いながら化粧を続けながら雑談する。
「本当に私なんかが2人と付き合うなんていいのかな」
「私は問題ないわ。でもトモキは男同士になる訳よ?」
「何言ってるんだ。マコは女の子じゃないか。俺はマコもマコトも愛してる。それならどっちと付き合おうと同じものさ」
相変わらずトモキは恥ずかしい事を言ってくるもんだ。俺まで顔が熱くなる。
化粧を終わらせて、次はいよいよウィッグと服装だ。服装だけは2人の前で着替える訳にはいかないので部屋から出ていってもらう。
「じゃあちょっと待っててね」
2人を部屋から出して普段の女装着に着替える。完全に気持ちはマコになっている為、女物の服も難なく着こなす事ができるようになっている。
しっかり着替えて立ち鏡の前で確認する。2人に見せる前にウィッグも被りたい所だが、変身する瞬間を見たいと言っているのだからそういう訳にはいかない。
「はい、2人とも入っていいよ」
「……おぉ〜! こっそりメイク付け加えた?」
「付け加えてないよ」
「凄いな。このままでも俺は行けるぞ」
どこに行くのだろうか。
「後はネットを被って、ウィッグを付けるだけ」
ちゃんと説明しながらウィッグを被っていき、最後にヘアブラシで馴染ませて完了だ。
「マコだ〜!」
「別人だな」
「ちょっ、シズキくっつかないでっ!」
シズキが身体を抱きしめてきて息苦しい。女装しただけなのにここまで対応が変わるなんて、本当に不思議だ。普段からこんな風に接してくれれば嬉しいのにな。
「ちょっとクルッと回ってみなさいよ」
「分かった。……っとっと」
立ち上がった時、感覚の薄い左足のせいでよろけてしまった。
「大丈夫か?」
「う、うん。ごめんね」
トモキに支えてもらって顔を熱くしながら立ち上がる。そのままくるりと一回転してみせると、何故か拍手が起こった。
「はぁ……本当にマコは可愛いわ。あ、そうそう。トモキに見せようかしら」
「何を?」
シズキがスマホを取り出すと、写真を開いた。
「ほらこれ、お尻にローター入れて絶頂した瞬間の顔」
そこにはシズキとゲームセンターにデートに行った時に、格闘ゲームで遊んでいた時に撮られた写真だった。
「や、やめてあげなよ」
「やめてよぉっ!?」
咄嗟にシズキのスマホを奪い取り、その写真を消し去って返す。
「もうっ……あんな姿トモキ君には見せたくなかったのにっ……」
「どんな姿でも、俺はマコが好きだよ」
「っっ……あり、がとう」
完全にトモキに恋をしてしまったんだな〜と思いつつ、頬をかいて恥ずかしさを誤魔化す。
「それじゃあマコちゃん。今日から3人付き合う訳なんだし、デートしましょ」
「そうだね。手繋ごうか、マコ」
「2人共……本当に、こんな私を認めてくれてありがとう」
ー完ー
不良な俺の趣味が女装な件。 Croquis @Croquis
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます