ブレイクアウト

相場には、2つの顔がある。もちろん、「変動」は「変動」なのだが、波の大きさや変動する期間が異なるのだ。


分かりやすく、海の波で例えるとしよう。

海岸線に打ち付ける波は、だいたいは予想がつくけれども全てを予期できるわけではない。突然大きな波が襲ってくることもあるのだ。しかも、そのタイミングは驚くほど唐突だ。


だいたい予期できる理由は、同じような大きさの波が同じような間隔で打ち付けているからだ。相場でいうと、レンジ相場と呼ばれるものだ。底が10万円、天井が12万円の株があったとしよう。この状態がしばらく続けば、それはレンジ相場だ。


ただし、いつもそういう変動なわけではない。だいたい、全ての株がそういう状態なら、株高・株安など起こり得ないのだ。でも実際は株高も株安も起こっている。ある時、12万円を大きく超えて15万円まで値上がったとしよう。(これをブレイクアウトもしくはブレイクという)

あなたならどう考えるだろうか?


高すぎる?それともまだまだ上がる?


うーん。どっちも間違いではない。

ただ、相場師であるわたし的にはまだまだ上がる方に賭ける。


それは危険だ!何時までも上がり続けるなんてありえないだろう!


そう思った方も多いのでは?

しかし、相場師的にはごく普通の考えなのだ。

上がり続けるなんてない!

という風に考えるひとが多いのも無理はない気がする。バブルが起きては崩壊するたびに、投資も投機もしたことがないような評論家が、いかに大衆が愚かであるかを吹聴して回るのだから。


でも、さざ波が大波に変わったとき、そこに何かがあると考えるのはごく普通の考えだ。 

更にいうなら、バブルが弾けるタイミングなんか大抵予測できるのだ。


大きな波はすぐに収まるわけではない。これは意外と勘違いされているのだが、リーマンショックの時でも、ジワジワと市場に兆候はあらわれていたのだ。なにも、全てが突然崩壊したわけではないのだ。


わたしだって、別にいつまでも上がるなんて思っちゃいない。でも、大波(相場ではトレンドという)には、波が収まるまで乗り続けるべきなのだ。


長々と説明してしまって申し訳ない。おっさんの一人語りなんて需要ないよな。はいはい。


でも、これはかわいいモナとリサの考えの根底にもあるものだ。それを理解してからでないと、ガールズのトランザクション(取引)を十分お楽しみいただけないと思ったもんで長々と話させてもらったというワケ。


さて、JK2人の様子をみていこう。


2017年 4月14日

1BTC=12万9411円


朝焼けが、2人の美しい顔を照らした。部屋の一画に置かれているコーヒーマシンが音を立てて黒い液体を吐き出している。


モナとリサは、トレードを本格的にするために学校に住居を移していた。まだトークン市場に十分な買い手と売り手がいなかったので、目星をつけたトークンを買って保有するだけではあったが、仮想通貨市場に資金が流入していることは2人とも知っていたため、気長に期が熟すのを待っていたのだ。それだけ可能性を感じていたということでもある。


参考までに、2人が保有しているトークンを並べておこう。

12 ビットコイン(156万円相当)

1000 LGHX(取引所)

230 HUMBD(ハミングバードニュース。学校で発売しているトークン関連のニュースを配信)

8 SCB(スクールボンド。学校の収益の1%に裏付けられた債券トークン)

34 NUMF(ニュー・アーバン・マネー・ファンド。外部の仮想通貨に投資をするファンド。運営しているのはモナとリサより1歳上の高校生、灰間瑞樹だ。運用額は300万ドル)


ビットコイン以外は、値段のついていないものばかりではあるが、その状態もやがてブレイクすることになる。

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Girls' Transaction @YAMAPON

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