Girls' Transaction
@YAMAPON
スズカケの約束
私が彼女たちと出会った時、その美しい見た目以上に聡明な人たちであると、手に取るようにわかった。
設立したばかりの学校に、生徒自身が発行する仮想通貨(トークン)の取引所を設立するというプロジェクトを進めていた私にとって、学生が興味を持ってくれることが何よりも必要だった。
モナとリサは、学生であったが、常識に囚われない考えの持ち主で、ビットコインの取引歴はすでに3年にもなっていた。2人が入学した2017年は、世界的に仮想通貨の取引が一気に広まり、投機的な相場となっていたので、先見の明のある女子高生に興味を持つのも無理はなかった。(釘を刺しておくが、女子高生自体にそこまで興味があるわけじゃない)
18世紀にニューヨークのウォール・ストリートのスズカケの木の下で24人のブローカーが協定を結んで『ニューヨーク証券取引所』の設立を宣言してから、世界中のありとあらゆる市場は一気に拡大し、富を集積していった。
が、仮想通貨は拡大の仕方が顕著であった。
2017年の4月に4兆円だった仮想通貨の市場が、同年6月には10兆円に成長していたと言えば、その勢いがわかるだろう。
マクロ的にそんな状況であったから、教育機関でもその勢いを利用できるのではないかと考えたのだ。だが、生徒数200人程度の学校では、市場参加者があまりにも少なく、外部の資金流入も十分でなかった。
第一、トークンの発行元である学生が10人程度しかいなかったのである。
そんなわけで、私は気だるさを装いながら、2人に取引所の仕組みを説明した。
思った通りだ。すぐに食いついてきた。
私はすぐにトークンの発行と上場手続きをするように勧めた。そして、その日(2017年4月8日)の夕方にはMONARISAがリストの11番目に加わった。
初値は0.00005BTC(ビットコイン)で、10000MONARISAが発行された。時価総額は7.5万円(当時のレートによる)
笑ってしまうほど少ない。
しかも、その日の取引のほとんどが私の買いだった。MONARISAトークンの引き受け手は95%が私だった。ちなみに、残りの5%は、校長だ。(プロジェクト開始の際に、発行されたトークンの5%は、必ず校長が自腹で引き取るように取り決めがあった)
ただ、世界的な資金流入の波は、確実に近づいていた。相場の様子が一変するまでに、そう時間はかからなかった。
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