A Black Child

葛西 伸哉

第1話

 俺は殺意を抱いている。

 名門に生まれた同じ血の兄弟でありながら、兄貴は将来有望な歌舞伎役者。俺はしがない黒衣くろごでしかない。

 今日も舞台がはねた後、兄貴は言いやがったんだ。

「無駄にチョロチョロ動きすぎだ。お前は見えない事になってるんだから、もっと目立たないようにしてくれよ」

 冗談じゃねえ。俺は目立ちたいんだ。

 兄貴さえいなくなれば、この家の跡取りとして俺は脚光を浴びる事ができる。

 毒を盛るか。それとも寝首を掻くか。

 ダメだ。

 誰にも俺の仕業と気づかれないように殺さなければ、意味はない。

 とすれば、方法はひとつだ。

 今日は芝居の中日なかび。ここで兄貴が死ねば、きっと後半は俺にあの役が回ってくるに違いない。

 俺は、舞台の端で小道具を渡すために待っている。兄貴が見得を切った。近づいてくる。

 今だ!

 俺は懐から短刀を取り出し、兄貴の腹を抉った。

 溢れ出た血が絢爛な衣装を染み通り、舞台に落ちて赤く汚す。金臭い匂いが広がる。

 短く呻いて、兄貴が倒れる。

 完全犯罪だ。

 客が騒いでるが、なぁに、姿

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A Black Child 葛西 伸哉 @kasai_sinya

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