芸術の煉獄にいる者たちへ

芸術はときに、悪魔的である。それは官能的であったり、狂信的であったりするからだ。だが、それがどうしたというのだ。常識人ではいられないことがある。そして、楽しげに踊っている悪魔には、同じく悪魔が寄ってくる。そうして彼らは集まって、切磋琢磨し、熱量をぶつけあって、魔道に堕ちようとも天上へと高らかに奏でるのだ。

この作品は、そんな人ではいられなくなってしまった、悪魔に魂を売った者たちが足掻き、不穏な影に怯えながらも、進んでいく愚か者の物語。けれども、進まなければ、道は見つかりはしないのだろう。

主人公の伊達:ダンテは悪魔たちの、ときに言葉よりも雄弁な音の中から己の道を見つける。その姿はやっぱり愚かで、白痴で、けれども熱くなる。

すべては音楽のために。では、その音楽は、なんのために?

この作品を読み終えたときに、たぶん、その答えとともに、一歩だけ進んだ。自分の道、というものをだ。

長々と話したけれども、この作品を読んだときの感動を一言で言うなら、そう————これは悪魔の文章だ。

このレビューの作品

白痴のダンテ