Q&A
天井カラシ
第1話 問題提起
「僕は一人が楽しい時は必要だと思うんだよ」
いつもそうしているように何の脈絡もなく僕の最近の悩みを彼女に話す。
僕の話を聞くとき、彼女は決まって目を閉じて、よくかみ砕いて意図を掬い取った後に短く答えてくれる。
「では、私は出ていくかな」
「そういう意味じゃないよ! 一人の時間が好きでもなにもおかしくはないよねって話だよ」
本音は大勢のノリは疲れるから苦手、なのだが。
彼女なら僕の考えを肯定したうえで諭してくれるんじゃないか、彼女の言葉なら僕も受け入れられるんじゃないか。
こんな僕の話を聞いてくれる彼女ならもしかしたらと思っていた。
「それ、解決する意味あるのかい?」
少しの間、思案したようにうつむいた彼女が次に放った言葉は僕が待っていた解ではなかった。
勝手に期待していたことを隠すように焦って適当な返事をする。僕の思惑なんか彼女にはお見通しだろうに。
「自分一人で考えるより、誰かに意見を求める方が有益だろ?」
誰かじゃなくて君にだろうに。
求めてばっかりで。
がっつきすぎだろ。
「解決する意味があるのかな」
彼女は僕が焦ろうとペースを変えずにゆっくりと返事をする。
おかげで僕も頭が冷える。
冷えたところですでに彼女に依存している数式は答えにはたどり着かない。
「ど、どういうこと?」
また、甘える。
「君は私とこうしていることは楽しいかい?」
それでも彼女は助けをくれる。
寄りかかった僕を避けることなく支えてくれる。
でも、僕は正解にはたどり着けなくて。
「た、楽しいよ……」
「そうか。じゃあ解決する必要はないね。少なくとも私にとっては」
毎回、彼女は僕の問いに明快な回答を与えてはくれない。
答えは問題を提起した人間にではなく、導こうとした人に与えられるものであることを、それだけを彼女は教えてくれる。
だから、僕はいまだに宙ぶらりんの答えをみっともなくぶら下げて、自分ではどうしようもできないままうろたえるばかりなのだ。
Q&A 天井カラシ @karashi1996
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