「能力登録制度ですか?」

 重要な話があるというから、ヒーロー事件が終わってからサボり気味だった事務所に顔を出すと思いのほか重要そうな仕事の話だった。

「そ。うちの事務所に来週の月曜日から土曜日の間に登録更新の為に担当地区の該当者が来るから、英毅君は手伝い頼むね」

「それは構いませんけど」

「けど?」

「その『能力登録制度』ってなんですか?」

「知らないのかお前?」

 先輩に怪訝な顔をされたが聞いたことがない制度だ。

 魔術の使用を許可する自動車の運転免許のような魔術師免許なら聞いたことがあるが。というか免許それは持ってるが。

「魔術師の英毅君にはなじみがないだろうけど、俺やクラウディアみたいな能力者の能力を超常現象対策課のデータベースに登録するだけの制度だよ。学校で身体測定するだろ?あれの能力者バージョンみたいなもんよ」

「ん。私も測る」

 クラウディアちゃんが張り切ってるところ悪いけど”夢日記”だったか?をどうやって測るんだろうか?謎である。

「あれ?それ前の日曜に所長は受けてませんでした?」

「俺みたいな支部長クラスは本部で検査することが義務付けられてるからな。それで行ってきた」

「本部ですか……」

 噂でしか聞いたことがないが、一人一人が町一つくらい消し飛ばせるような化け物ぞろいだと聞いている。

 噂話に尾ひれが付いているだけだろうが、おっかない場所だという事は疑いようがないな。あまり近づかないようにしよう。

「それで何すればいいんですか?」

「エリちゃんのサポートと能力者の監視かな」

 補佐はともかく監視ってどういう事だ?

「案ずるな始まればすぐにわかる」

 厄介ごとの予感しかしないんだけど。

「それよりも所長」

「なに?」

「あの二人は呼ばないんですか?」

 あの二人?

 たまに所長が言ってる全く顔を出さない残りのメンバーの事か?

「呼んだけど反応なし。そろそろ除籍するべきかもねえ」

 黒タグを回収するの面倒臭いんだけどなあと言いきる所長の様子から見てあまり強い奴ではないのだろう。強い奴ならあからさまに嫌そうな顔をするはずだし。

「所長の人望ないだけでは?」

「人望ない事は否定せんが、勝手に実力の差に絶望して諦めただけだろう」

「どっちにしても所長のせいじゃないですか」

「なんでもかんでも俺のせいにすんな。本人に聞け」

 ……あの二人しか知らないような話題で盛り上がっても俺は困るな。

「さっきから話してる二人って誰ですか?」

「うちの事務所のメンバーだよ。半年くらいこっちからの連絡無視してるから会うことはないだろうけどな」

「あの二人は能力者ですし、次の検査には来るのでは?」

「どーだか、無視したら罰則だけど。自暴自棄だし来ないかもよ?」

 もしかしたら会えるのかもしれないのか。話を聞いてる限り大したヤツらではなさそうだし、あまり気にしなくてもいいかもしれないな。

「連絡事項は以上だ。何か質問は?」

「学校はどうするべきですか?」

 許可取れれば堂々と学校サボれるし。

「サボらせんぞ」

「——とエリちゃんが五月蠅いので授業が終わってから寄り道せずにすぐに来い」

 考えてることは筒抜けだったらしい。

「ん」

「クラウディアは学校が終わってからみっちり測定するからね。ちゃんと学校に行くように」

「む」

「そんな顔してもダメだからね。所長命令です。ちゃんと行きなさい」

「……はい」

「よろしい」

 あっちもあっちで説得が終わったようだ。

 

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