後編

「あれ?・・・・・ここでいいのかな。」

紙に書いてあった活動場所に来てみたものの、そこは10畳くらいの狭い会議室みたいだった。

しかも誰もいない。真ん中に会議用の長い机1つとイスが何脚か置いてある。

机の上には、たくさんお菓子が置いてあった。

せんべい、クッキー、チョコレート、スナック・・・。

そして、ポテトチップスの封が開いたままだった。

これじゃ、湿気ちゃうよな。なぜか昔からこういう事は気になる。

持っていた輪ゴムで止めようと机の上に手を伸ばす。

その時だった。手がすべったのか袋ごと床に落ちてしまった。


逆さまから落ちたので不運にも、ほとんどのポテトチップスをばらまいてしまった。

やべっ・・・・。イスの上に落ちたものは何とか拾えたものの、

床に落ちているのは手が届かなかった。どうしよ。。。。

ていうか何で人が居ないんだよ~。

僕が、一人でおどおどしている時だった。


ガラガラーーー、、、、

「な、なにこれ???」

「すみません!ちょっと落としちゃって・・・」

「あーーー、もーーー」突然部屋に入ってきた女の子は、

突然びっくりしたかと思うと、すごい勢いで床にちらばったポテトチップスを片付けてしまった。

僕が呆然と見ていると、彼女は、

「あっ、ごめん。食べるんだった?」と言った。

「・・・」

「ごめんごめん、冗談に決まってるじゃない。で、あなたは何?何の用?」

「いや、あのこのサークルに入りたくて…、これ見て来たんですけど。」

僕は、持ってきた紙を彼女に差し出した。

「ふーん。障害学生ボランティアサークルねえ…」

「ここで、いいんですよね?」

「いいけど、あなたって車イスだったかしら」彼女は、僕の車イスをじっと見て言った。

「去年、事故っちゃって…」

あんなにこの事を重苦しく思っていたはずなのに、

軽々と出てきた言葉は僕に妙な違和感を感じさせた。

「やっぱり。前に見かけたことがあるような気がしたから」

「中里雄大って言います」

「私は、川西 恵。ゆーとぴあにようこそ」

「ゆーとぴあ?」

「そう、このサークルの名前。障害学生ボランティアサークルなんて言ってる人は、ここにはいないわ。第一、こんな長ったらしい名前、誰が好むのよ」

「そっ、そうですね」僕は、少し圧倒されつつも答えた。

「じゃあ早速だけど、今から参加してみる?」

「はい。じゃ、そうします」今から帰るのも何なんで、参加してみることにした。

「そうそう、カッターを取りに来たんだった」

「こっちよ。自分で来れるわよね。」

「あっ…、はい。」

彼女が向かった先は、中庭だった。

真ん中に大きなキラキラした木が立っている。

数人が、その大きな木にライトをかけたり、周りを飾り付けたりしていた。

車イスの人もいる。

「そっか。もうすぐクリスマスか。」いろいろあってすっかり忘れていた。

僕が、ぼおーっと見ているとツリーの側に立った川西さんが、呼んでいた。

「ちょっと~、何ボケーっとしてるのよ。こっち来て手伝いなさ~い」


言葉だけ取れば、それは怒っている言葉だが実際の彼女は、柔らかな笑みを浮かべていた。

横にあるキラキラ光ったツリーみたいに…。


これが二年前の冬、僕の身に起こった出来事だ。

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恋人がサンタクロース 春田康吏 @8luta

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