果てを見つける果てない旅

 地球から何万光年先の宇宙を見るにはどうすればよいのだろうか?


 それは、ロケットを飛ばし、果てない宇宙の探訪をさせればよいだけだと言うかもしれない。たしかに、その通りである。幾多の人工衛星がこの広い渺茫びょうぼうたる宇宙を彷徨うように、その一つに終わりなき宇宙の旅を任せればよいだけの事である。


 だが、実際にこの目で、この心で、宇宙の果てを感じるには?


 そうするためには二人の男女が子孫を残し、その子孫がまた子孫を残し、命の循環を繰り返し、生と死の輪廻を繰り返す必要があるということは必然である。宇宙の果てを観測するために、何百年という歳月がかかるのなら、現在の人間の寿命から考えると不可能であるといってよい。従って、その子の息子、そして孫に宇宙の果てを見るという任を与えて世代を超えたプロジェクトとして考えなくてはならない。こうして「ムカデ計画」という人類の到達場所を月の何千倍にも広げようとする計画は始まった。


 現在もこの「ムカデ計画」は続いている。宇宙船「ホッホドルックプンペ」の搭乗者が生存している限り、この計画が終わることはない。そして、搭乗者が宇宙の果てを見るまでは、終わらないし、終われない。


「そらはどこまでも続く、そして銀河も、宇宙もきっとずっとどこまでも続く。そんな宇宙を冒険するために、生まれてきたんだ」


「星はどこにでも、どこまでもある。そんな星を見て、これから過ごすのよ」


宇宙を股にかけ、銀河を巡る、一団がいた。保志葛一星と、天希そして、天翔そらと星凪せなである。


「宇宙は無限大、これからもずっと大きくなるって書いてあった。俺はそんな宇宙よりも大きい男になるよ、父ちゃん」


 その一団は現在もこの渺茫たる宇宙を絶賛航行中である。

 彼らは人類の歴史を塗り替え、月の何千倍もの距離を旅している。

 もう地球からは何光年離れているのかなんてことは分からない。


 彼らは宇宙の果てを求めて果て無き旅をする。

 それは矛盾していているかのように思えるが、実際のところ、矛盾していない。

 自分たちが生き続ける限り、自分たちが前に進む限り、宇宙は終わらない。


 その宇宙を模索し、銀河を探求する。


 こうやって綿々脈々と、父たちがやってきたように、俺と天希も次の世代へとバトンを渡す。このバトンが続いている限り、俺たちの夢は終わらない。これは一つの呪縛のようで、終わらない業のようにも思われるかもしれない。


「いっちゃん、また難しく考えているでしょ。そんなに重く考えなくてもいいんだよ」


――無重力だけに。


 


 俺たちは生きているだけで意味がある。

 俺たち保志葛一家は、宇宙の星屑になるまで果て無き旅を、果てしなく続ける。


「これって矛盾してないよな」

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宇宙少年と銀河少女~Space Wanderer~ 阿礼 泣素 @super_angel

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