物語〈フィクション〉にはお話としての型、パターンがあります。
多くの物語は先人が作り上げてきたそうした何かしらのパターンをうまい具合に組み合わせて新しい物語を構成するわけですが、そのどの過去作品のどのパターンを参照したのかを逐一言及し、それを積み重ねていくことで一本の物語に仕立て上げてしまったのが本作品です。実にメタい。
自分がいる世界がもし何かの物語であるとしたら――
惜しみなく披露される映画、アニメ、小説等の演出技法に関する小ネタ。どこからともなく流れ出すBGM。突如降臨する創造神。登場人物全員で酒を飲み語らうシーンを設定するために舞台を未成年の飲酒が認められている国へぴょんと移してしまうという強引なまでの自由奔放さ。
これは果たして何ジャンルなのか。
既存の作品にとらわれない融通無碍な地平が広がっています。
著者様の他作品の合わせて読むとより楽しめるかも。
あえて誤解を恐れずに言えば、『怪作』と称してしまってもよいでしょう。
ご一読あれ。