第20話 彷徨える【名もなき一振り】
カルマ達とサディスが激戦を繰り広げている一方―
―モハテ平原中央帯、シルエット城門前広場付近、サディス軍。
「なんだ……あれはいったい何者だ!?」
サディスから一軍の指揮を託された腹心「ガブル」。四楼であるヴォルドの合図を待ち、四方向から一気に襲撃するというのが今回の作戦。それは一切の滞りなく行われる予定…のはずだった。
敵の注意を引き付けるための陽動がほぼ無傷で終了し前線を後退させている中、事態は急展開を迎えた。突如として東側から現れた謎の戦士に襲撃され、なす術も無く撃退されていいるのだ。
ガブルも現状を上手く把握できていない。しかし突如として現れたそれに、瞬く間にサディス軍の三分の一を掃討されてしまった。
「あれほどの強さ……まさか「勇者」のパーティーか?」
対人用の戦闘訓練を十二分に積んでいる歴戦の猛者ばかり揃えた今回の一戦、それをただの一撃で屠り続ける存在など、ガブルにはそれしか思いつかなかった。
勇者がシルエット内に滞在していることは把握済みだ。だがしかし、それにしてもあれの強さは度を越している。
「がっ、ガブル様!ダメです!象型でも止められませんでした!あいつ強すぎます!!」
「ぐっ……構わん!!一刻も早く戦線を下げろ!本来の予定よりさらに二回り程度下がるのだ!!」
「しっ…しかしっ!それでは敵の追撃を許してしまいます!!」
「私がサディス様に命を賭して詫びる!!いいから一兵でも多く生き延びらせることだけを考えろ!!」
「は…はっ!!直ちに!!」
「それと森に向かって「ロードランナー」を放て!急ぎサディス様にこのことをお伝えするのだ!!俺は前線に出てあの化物を止める!!」
「なっ……ダメです!!今ガブル様にもしもがあれば!!」
「俺なら時間稼ぎぐらいできる!!いいから急ぎサディス様にお戻り願え!!」
「はっ……ははっ!!」
ガブルは腰に携えた細長剣を握り、マントを翻して敵に猛進をかける。マントが空を仰いだの同じ瞬間に、人型カエルモンスター「ロードランナー」が放たれた。戦闘力こそ低いが索敵、偵察能力が高く、主に伝令として重宝される存在だ。
「サディス様!申し訳ありません!この失態、せめて我が剣技にて濯ぎましょう!!」
撤退していく部下たちを背に、ガブルの大きく鋭い瞳が、若く整った顔立ちながらも返り血で真っ黒になった大剣持ちの少女を捉える。少女が味方の肉片を剣から無理やり引き抜くと、ゆっくりと首を回してガブルを視界に捉えた。
「……敵の接近を確認、排除対象と断定。命令により、奪命します。」
少女の両手が大剣の柄に触れた瞬間を見計らって、ガブルは勢い任せに細長剣を抜き飛びかかる。
「サディス腹心ガブル!!いざ尋常にッ!!」
ガブルの鋭い三連突が、少女の構えた大剣を襲う。
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