第4話   残酷な死の末路

「なんなんですかこれはっ!?」


サムスは驚愕して震えながら、青白く光る瞳を右往左往させ落ち着かない。


「斬撃、打撃、貫通、状態異常が無効、電撃、火炎、振動にも耐性…身体能力も神に匹敵しているし…しかも火水雷光魔法は全習得、風も一種を残して習得済み…ありえない、こんなのありえない!!」


何やら一人で勝手に大騒ぎしているが、こいつはさっきから何を言っている?

魔法?耐性?ゲームか何かか?まぁ魔王倒すぐらいだからファンタジー確定か。それにしても随分大雑把な設定だこと。何それラスボス?


蔑んだ目を続行しながら呆けていると、やはりこちらは険しい表情で俺を睨みつける。ただ違うのは、椅子から降りて短い足をぱたぱたと急がせ、前のめりになって目前に迫って来たのがある。


「あなた…一体どういう死に方をしたんですか!?」


「どうって…別に毒薬を服用した後、銃弾で頭貫通させて、高電圧機で電気ショックを浴びて、硫酸をバケツ一杯被って、ギロチンで首を断ち切った後、爆弾で死体を吹っ飛ばしただけだが?」


 あー…なんだかこの喋り方疲れてきた。あともうその「何こいつおかしい…」みたいなあんぐりマウスやめていただけないでしょうか?


「い…意味が解らない。どうやったらそんな死に方をするの?そもそも自殺?他殺なの?もし他殺だったらどんな恨み方されたらそうなるの?それともなに?何かもの凄い秘密でも知ってるのこの人?…ダメ、理解できない。こんな人勇者にするなんて怖すぎる…。」


 そして、何やら私の死に方が理解できないらしく、椅子の前に逃げ込むとうずくまって頭を抱えてしまわれた。いや理解するも何も、ただそういう風に死にたかったからそうしただけなんですけど。


「…とにかく話を、話を進めないと…早くしないと人間が…。」


 あ、もう慣れない一人称使うと噛んじゃうので、元通りに「俺」でいこう。やっぱね、主人公はね、「俺」じゃないとね。


「すみません。少し取り乱しました。…まずはあなたが救う世界について説明します。…あなたが救う世界の名は「シエンダ」、既に大陸の99%が魔王の手に堕ちており、残り少ない人間たちは大陸の東端、「シルエット」という国を中心とした地域に追いやられています。」


 あ、あとね、俺なんか世界救うらしいよ。「転生者」だって。笑っっっっちゃうよぉねぇぇぇぇ。ただの「死にぞこない」ですよ俺。それに救われちゃう世界も世界だよね。ってか世界は救ってほしいの?何について?どうやって?どうせあれでしょ。魔王殺すか倒して終わりでしょ。知ってるよーそういうゲームたくさんやったも~ん。だって研究職ってマジで暇なんだよ?レンチンしてるときとか試験機にかけてるときとかずーっと座って待ってなきゃいけないんだよ?常に刺激がないと死んじゃう俺には辛すぎるよー。だからよくやったんだけどね。でもあれパターン入ったらもう終わりじゃん?もうそうなったらクリアしなくても飽きるんだよね。あ、俺ストーリーは見ない方だから。だって早くバトりたいしー。


「既に100人以上の勇者がこの大陸に降り立っていますが…わずかに3人を残しその命を散らしています。もはや絶望的…今後救える可能性のある世界としてのランクがあるのですが、AからC、1から10を目安として、現在のシエンダのランクは「C-6」。これは今救う必要のある世界の中で2番目に低い数値です。しかしあなたほどの恵まれた数値なら救えるかも…いや、もはやあなた以外に救える存在はありません!だから…。」


 あー暇だ。せっかくの絶景が台無しだ。なんかいる。なんか変なのがいる。でも幼い顔にしては美形だし。まぁ主人公だし、ちゃんとよくあるやつやっときますか。


 俺はサムスと名乗る女神の、修道服の上からでもはっきり浮き出たVラインの付けねを食い入るように睨みつけ…ん?なんかこっちくる?


「話聞いてたかチクショオオオオオオオオオオッッッ!!!」


 ぐにーんぐにーんぐにーん。


 これだけで俺のほっぺがつままれて力いっぱい引っ張られてる事が想像できたやつはえらい!このクソみたいな回想を読んでくれてありがとう!


「…で、なに?葉梨?おいしいのそれ?」


「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぅぅううう!!!」


 ……このいかにも「目にモノみせてやる」みたいな形相は、話を理解するまで離してくれないものだな。

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