D いつものように愛したい
二人で遅いお夕飯を食べた。
白蓮は、こみ上げて来るものがあって、泣き出してしまった。
「ふえ~。ふえ~ん……」
ヤケクソになって白のクッションをボスボスと叩き始める始末であった。
「ああ~ん……。うっく、ひっく……」
突然、智樹がその口をふさぐ様に優しくkissをした。
「ごめんね、白蓮」
優しくて心のこもったコトバだった。
「ごめんね、智樹さん」
反省しきりと言った感じのコトバだった。
「いや、俺が悪いんだから……」
白蓮の目を見ながら話す智樹。
「うううん。ジェラシーで一杯だったの。それが恥ずかしくて、恥ずかしくて……」
下を向く白蓮。
「それが当たり前の感情だよ。俺だってきっと同じ気持ちになると思うよ」
ちょっと気持ちもゆとりが出て来た。
「ごめんね、智樹さん」
「ごめんね、白蓮」
二人で見詰め合っている内にぷっと吹き出してしまった。
「白蓮、可愛い! ふふふ」
「なあに? 子供扱いして! あはは」
「俺って甲斐性ないだろ? 経済的にさ。去年の白蓮の方が収入多いんだよ」
食後の珈琲を飲みながら、胸の内を開いた。
「俺はあの頃はまだ自分の絵って言うのができていなくってさ、何を撮っても駄目。白蓮に出逢ってからだよ。そう……写真集、『Comme d'habitude』を作ったろ。グアムへロケとか行って、すげー楽しかった。あれで変われたのかなって感じなんだ」
「そうなんだ……。知らなかったの。ごめんね」
唯、唯、聞き入る白蓮。
「今日はさ、ちょっと過激な仕事だったんだ。もうしないよ、白蓮の為にね」
ウインクなんかしてみせた。
* *
智樹は明るく笑ってバッグを持って来た。
「実は、この間からさ、秘密にしていた事があるんだ」
「なあに?」
白蓮は涙を拭いながら尋ねる。
「これ……。買ってあげられなかった、マリッジリング。白蓮の気持ちに可哀想な事をしていたから、せめて、これをプレゼントしてあげたくてね……。今日の仕事とかを引き受けたんだよ」
一呼吸して目を瞑った。
「お揃いだよ……」
小さな声で。
「さあ、左手を出して……」
二人で……指輪を……交換した……。
私達、結婚式はできなかったけどこうして愛し合えるねって。
* *
何度も何度もkissを繰り返した。そのままベッドに傾れ込んだ。
――ぷらいばしー。
* *
智樹はカメラを構えた。
「じゃあ、今日の記念に写真を撮るよ~!」
「きゃ! まだ服着てないよ~」
慌てて胸に脱ぎ散らかした下着を押し当てた。
「ごめんして~。もうジェラシーは焼かないよー」
白蓮はツンツンと智樹の頬を叩いた。
智樹が、又叩かれてしまったと笑いを堪えた。
「ウソ! もうジェラシーは焼かないって? うううん良いんだよ。そんな白蓮が好きなんだ。これからもよろしく。写真集、『Comme d'habitude』のタイトルは、フランス語で『いつものように』って意味なんだから」
「これからも、いつものようにね」と二人。
パシャ。
一枚の写真が微笑む。
……ありがとう。
智樹さん……。
Fin
【旧】16だもん♪結婚したっていいでしょう いすみ 静江 @uhi_cna
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