第22話 明かされる真実
戦いは
「エロエロエロ♪ まさかSSランクの秘宝獣にここまで食らいつけるとは、思いもしなかったよ♪……けど、いつまで保つかな♪」
「両者全くの互角ってところねッ……黒城、隙を見て倒しやすそうな方から狙うわよッ!」
「待て、ヒナコ」
しばらく暗闇の中に居続けたことで、視界はぼんやりと見えるようになってきていた。黒髪の少年は青い鳥を抱きかかえたまま様子を伺っていた。
「はぁ……はぁ……」(意識がもうろうとしてきたのです…… 幻聴まで聞こえてきたのです……)
ジト目の少女は息を切らしながら、額の汗を掌で拭う。足はガクガクと痙攣を起こしているが、なんとか自分を奮い立たせる。
黒髪の少年も、その異変に気づいたようだ。
「……生徒会長の様子がおかしい」
「エロエロエロ♪ チミのダムドレオのモードチェンジは確かに強力だね♪ なにせダイアモンド並の硬度を誇るドラグーンの関節を食いちぎっちゃうくらいだから♪……け ど」
ピエロはその場でクルクルと踊り出す。
「秘宝獣の体力の大幅な消耗、そして秘宝獣と心を通わせることで生じる、精神的な疲労も大きいんじゃないかな♪」
どうやらダムドレオのモードチェンジは、強大な力を得る反面、自身の体力を大きく削る状態になるようだ。さらに、ダムドレオのパートナーであるジト目の少女にもその負担が波及している。
「……っ!!」
ピエロの指摘に、ジト眼の少女はさらに呼吸を乱す。……以前パレットと共闘した黒髪のポニーテールの少女は、フェンネルが光を蓄えるまでの時間を、自身が囮になることで稼いでいた。
それだけリスクの大きい技を使ってようやく互角で戦えている。そして、ジト目の少女もそれをわかっているから、モードチェンジを解かずに危険な状況に身を投じているのだ。
「黒城チャンスよッ、ダムドレオなら倒せるかもッ!」
「……ヒナコ、ダムドレオに『リジェネレート』だ……」
「はぁッ!? 敵を回復させてどうすんのよッ……」
言いかけた青い鳥は、黒髪の少年の眼がいつになく本気であることに気がついた。
「仕方ないわねッ、『リジェネレート』!!」
青い鳥の体が白く輝く炎をまとう。白い炎は、ダムドレオの身に宿り、徐々に傷が癒えていく。
「継続治癒の炎よッ!これでいいのね、黒城ッ?」
「黒城、何のつもりですか……?ワタシはまだ……」
「やれるのです、か?……強がってる場合じゃないだろ。仮にも生徒会長だろうが。少しは俺たちの自主性にも任せてくれ」
(元、生徒会長なのです……)
ジト眼の少女の顔から、緊張が解かれた。
「エロエロエロ♪ 盛り上がってるとこ悪いんだけど、そろそろ終わりにするよ♪」
道化龍の継ぎ接ぎ部分がガバッと開き、無数のナイフが飛び出した。仕込みナイフだ。
「『サーカスナイフ×100』♪」
100本のナイフが一斉に黒髪の少年とジト目の少女に降り注ぐ。
「黒城ッ、危ない!!」
青い鳥からの距離では、守りに行くことができない。
だが、黒髪の少年は咄嗟にポケットから白銀色の宝箱を取り出し、開けた。
「
「ゴゴゴゴゴ……」
黒髪の少年の持つ宝箱から現れた巨大な鋼鉄の岩兵の体が盾となり、ナイフは弾き落とされる。
[Sランク秘宝—RMG《レアメタルゴーレム》—]
「黒城ッ!? アンタいつの間にッ……」
思えば、パレットが第2層へ辿り着いた時、地割れから
「今だ、ヒナコ!!」
「今なのです、ダムドレオ!!」
一羽と一匹が双方向から
「「『
青い鳥とダムドレオのコンビネーション攻撃により、道化龍の首を切り裂いた。
道化龍は壊れたおもちゃのようにガシャンと地面へと崩れ落ちた。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
【黄金の間】
辺り一面を黄金で囲まれた部屋で、ジェスタークラウンというピエロは後ろ手をロープで縛られて正座させられていた。
「アタシたちの勝利よッ!さぁ、アンタの計画を全て話なさいッ!」
「話さなければ不法侵入罪で訴えるのです」
「アンタはどこまでが本気なのかよく分からないわッ……」
先程までの死闘が終わると、一転して和やかな(?)なムードに包まれていた。
「わかった♪ 全て話すよ♪……ボクちんが8代目ジェスタークラウンの名を受け継いだのは、今から20年近く前の雨が降った日の夜のことだった……」
「んなことァ聞いてないわよッ!?」
青い鳥はピエロの台詞を遮った。
「んー♪じゃあピエロになった経緯はかつあいするね♪ 」
「まったく……調子のいいピエロなのです」
「アンタも大概だけどねッ」
そこからは、ピエロは真剣な表情になって語りだした。
「この地下迷宮は、一種の結界のような役割を果たしていたんだ。そして、台座にある秘宝がその結界を解くトリガーになっていた。」
「……結界?」
「結界は全部で三つあった。だが、その全てが君たちの手によって解かれてしまったんだ。地下一層に青い炎があったよね? あれは本来、邪悪な者がここに立ち入れなくするためのものだった。ただし、イレギュラーが生じた。」
「……アタシたちと、あのパレットって少女のことねッ」
「そう。好奇心という名の純粋な心を持った君たちの手によって、不測の事態が起きてしまった。結界にはこの世界を守る重要な役割があったんだ。『
それを聞いた黒髪の少年には、いくつか思い当たる節があったようだ。
(……俺が普通なら死ぬような無茶をしても死ななかったのは、そういうことなのか……?)
「再度結界を貼るのには時間がかかるんだ。その間に悪意を持ったものが陽光町で悲劇を起こしたら……
その場にいた全員の背筋が凍った。まだ実感は湧かないが、もしこのピエロの言ってることが本当だとすれば、明るくて楽しい陽光町が地獄と化してしまうかもしれない。
「じゃあ、アタシたちはどうすればいいのよッ!?」
「なにかできることはないのですか!?」
「もう一度結界を張るまでには時間がかかる。その間に何事も無ければいいんだけど……ずっとこの機会を伺っていた人物を一人知っているんだ。必ず何らかの行動をとるはずさ」
「いったい誰なのッ!?」
「その人物の名は
「…………」
青い鳥はその言葉を聞いて沈黙してしまった。
正気とは思えないほどスケールが大きい話だ。
「準備をするのに時間がかかる。花火大会が終わったあと、陽光神社の社に来て欲しい。陽光公園、第7のエリア……『秘密基地エリア』がそこにある。」
「その話、信じてもいいのです?」
「……お前の言う通りにすれば、世界は助かるのか?」
「こうなってしまった以上、僕にできるのは可能性を与えることだけさ。0%から、0.001%にね。……瑠璃は強いよ。この世界の誰よりも……」
黒髪の少年と青い鳥、そしてジト目の少女は、互いの顔を見つめあった。そして同時に頷いた。
「また、後で落ち会おう♪」
ロープを解いて貰ったジェスタークラウンは、エレベーターに乗る彼らを見送った。その様は、いつになく真剣な表情で、何かを考えているようだった。
(瑠璃のことだ……遅かれ早かれ、いつか封印を解く手段を打ってきたことだろう……頼んだよ若者たち……陽光町を、救えるのは君らしかいないんだ……)
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