THE JUSTICE

第0話 プロローグ

この暗闇に飲み込まれそうだった。

ビルの屋上、星明かりがなかったが街はそれとは無関係に輝いていた。

風がやさしく吹く。そのやさしさが逆に薄気味悪さを感じさせた。


目の前にはよく知る男が立っていた。

近未来的な見た目で闇に紛れ込む様な漆黒しっこくよろいを身にまとっている。

鎧の隙間からぼんやりと出る光のおかげで

かすかに姿を見ることができた。

その姿を見ると全身が震える。

ー 怖い 恐ろしい 逃げたい ー

この三つの感情が脳裏のうりをグルグルと巡り、吐き気と自分も鎧を着ているからでもあるだろうか、息苦しさを感じさせた。

相手も自分のことをよく知っている。

余裕なのだろうか、微動びどうだにしない。

らなければ、られる…


無理やり呼吸を整え、集中した。

先に仕掛ける…!

勢いよく飛び出した。

鎧の性能で一瞬で何mも前へ出る。

だが相手も同じタイミングで飛び出てくる。

右腕を振りかぶり相手の左頬ひだりほほへ。

相手も同じ動きをしてくる。

嫌な音がして二人とも吹き飛ぶ。

もろに屋上の床に叩きつけられ腰に激痛が走った。床がめり込む。

痛がっている暇はない。

すかさず立ち上がり前を見る、がいない。

気づくころには左に回り込まれていた。

右蹴りがくる。前に飛び込んでけ、手で着地、そのまま下から蹴り上げる。

ギリギリでかわされた。

隙だらけになった脇腹に相手の拳が入った。

また嫌な音がした。

鎧 兼パワースーツを着ているが、相手も同じものを着ている。ダメージはかなりカットされているはずなのだが、それでも痛い…

だが負けるわけにはいかない!

崩れた体勢で右の拳で攻撃を加える。

再び弾け合う。


何度も何度も殴り合った。

激しい金属音と今にも火を噴きそうな機械音がこの眠らない街に響き渡り、その度に痛みが走った。

体にも心にも…

その刹那せつなが何倍にも遅く感じた。


遠くでヘリコプターの音が聞こえる…

その一瞬の雑念ざつねんすきを突かれ、ふところに潜り込まれた。しまった…!アッパーがくる。

だが自分も反応し、

左から蹴りを入れようとする。

ー どちらが速いか ー



気がつくとそこには見知らぬ天井があった。


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