はちみつりんごのど飴=神 1
その次の日、前日の予告通りそいつの病室を訪ねてみたわけだが
「帰れっ!!!!!」
早速怒鳴られてしまった。生憎二人部屋の相方の人は検査で不在で、今病室にいるのは俺とそいつだけだ。
「昨日来ないでって言ったのに!」
「来ないでって要求を吞んだ覚えはない」
「ボクの意志尊重する気持ちないでしょ!」
しかしながら、当の本人は本気で嫌がっている感じではない。決して歓迎はされていないが。そう。ここ重要。
まあ、不機嫌であるのは事実であろう。ほっぺたをぷくぅと膨らませて、そっぽを向いてしまっている。小学生かこいつは。こういう表情をしている奴には、どう対処すればいいのであろうか。・・・・そうだ。
「おい、」
声をかけてみる。そいつは視線をこちらに戻し、「は、何言ってんのこいつ馬鹿じゃないのホント」とでも言いたげな目を向けてきた。俺は不敵の笑み(に見えてる自信はさらさらないが)を浮かべ、制服のポケットからブツを取り出した。
「これ、いるか?」
そいつは明らかに疑った目つきをやめることなく、ぶっきらぼうな顔で俺に尋ねた。
「それ、何?」
「はちみつりんごのど飴」
そう。蜂蜜林檎喉飴。はちみつりんごのどあめ。ハチミツリンゴノドアメ・・・。
素晴らしい響きだ。
俺が一番好きなのど飴ははちみつ林檎のど飴である。というか、のど飴はこれしか食わない。俺の脳内等式は「のど飴=はちみつ林檎のど飴=神」なのである。決して「ネ申」とかいうニコ〇コで崇められてる神とは違う。だからこそ、これを食べればこいつの機嫌も直るだろう、と考えたのだ。これを食ってもほっぺたを膨らませ続けられるならそれはある意味才能だと思う。
「キモ・・・」
「え、それなんかの比喩表現?」
「どっからどう考えてもあんたの顔がキモイの!なんかニヤニヤしてるし
おっと、のど飴のことを考えてニヤニヤしているのが、そうとお気に召さなかったらしい。
Candy & Rain 松下桜桃 @matsushita
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