【閲覧注意】幽霊ラブホテルでのぞきは合法ですか?

ちびまるフォイ

見えて聞けてもろくなもんじゃない

「なん……だと……!?」


その話を聞いて俺は戦慄した。

幽霊のためのラブホテルがあるなんて。


「もともとラブホだったところが火災で燃えて、

 前は悲鳴が聞こえるとかで廃墟になっているんだけど

 幽霊界隈では今でもラブホとして営業中らしいよ」


「坊主のネットワークすげぇ!! その場所おしえて!!」


「あのな……幽霊が見えるなんて良いもんじゃないぞ」


友人にもらったメモを片手に向かったのは廃墟と化したラブホテル。

不気味なたたずまいに腰が引けるが性欲が勝つ。


幽霊だから覗いても犯罪にはならない。

(※良い子も悪い子もマネしないでね)


中は暗く、どの部屋を開けても何もない。怪奇現象すらない。

いきりたった性欲の象徴は空気が抜けるようにしぼんでいった。


後日、そのパッションを友人にぶつけた。


「どういうことだよ! 全然はだかの幽霊見れなかったよ!!」


「お前霊感あるの?」


「ねぇよ!」

「それでよく行ったな!?」


「まだイってねぇよ!!!」

「うるせぇよ」


友人は3枚のお札を出した。


「このお札は幽霊に関する願いをかなえてくれるお札だ。特別に1枚やるから」


「それをどうしろと?」


「幽霊が見れますようにって、願いをかけばいいだろ」

「なるほど!」


さっそく願いを書くと、友人の守護霊である信長が見えた。


「すごい! 本物だ! というか、信長じゃん!」


「金を出すといい守護霊を雇えるのさ」

「そういうシステム!?」


友人の守護霊は置いておいて、ふたたびホテルを尋ねると

今度は受付の幽霊もホテルに入っていく幽霊も見えた。


「す、すごい! 今から鼻血が出そうだ!」


一室に狙いを済ませて中に入るとまさに情事にふけっている最中だった。


「きゃーー! のびたさんのエッチ!」


幽霊はあっという間に消えてしまった。

いきなり俺の本名がバレたのはさておいて友人に相談した。


「幽霊、俺の姿見えてるんだけど!?」


「だろうな」


「これじゃ覗けないよ! ドアが開いた瞬間にばれるからな!!」


「……で、本音は?」



「おふだください」


友人にわいろという名の友情を握らせてお札をゲット。

2枚目の願いはもちろん「幽霊には俺の姿を見せない」だ。


ふたたびホテルに訪れると前とはうって変わって誰も俺に気付かない。


「やった!! これでめちゃくちゃのぞき放題だ!!」


ラブホの一室に潜んで、幽霊のカップルが来るのを待った。

やがて入ってきた二人組は俺の存在にまったく気づかない。


待ちに待った濡れ場がはじまると、違和感に気がついた。


「……おかしいな。全然燃え上がらないぞ?」


待ちに待ったシーンが目前で繰り広げられているというのに。

原因はすぐにわかった。


「音だ!! 音がない!!!」


……というのを、深夜2時に友人をたたき起こして熱弁した。


「音がないんだよ! ミュート状態のAVほどシュールなものはないよ!!」


「……それで?」



「おふだください」


「またかよ!!!」


プライドをかなぐり捨てた「土下座しながらの歩行」を見せつけたことで

最後のお札をなんとか手に入れることができた。


「さぁ、これが最後の願いだ。俺にも幽霊の音や声が聞こえますように!!」


お札を使うと、まるで聞こえなかった幽霊の声が聞こえてきた。

これでもう完璧だ。どこにも隙は無い。


「またせたな。これで最高の瞬間をこの目におさめることができる」


「お札をこんなことに使うやつ初めて見たよ」


友人のあきれ顔は見なかったことにして俺はホテルへと進んでいった。

その後ろ姿たるや、「男はつらいよ」の別れ際の寅さんをほうふつとさせるものだったろう



それだけ堅い意志と哀愁に満ちていたはずだ。



 ・

 ・

 ・



ラブホから帰って来た俺と友人はばったり会った。


「おお、どうだった? ついに見れたのか、よかったな」


「…………」


「おいどうしたんだよ。あんなにエッチな幽霊を見たいって言ってたじゃないか。

 いいもん見れてよかっただろ。音も聞こえたわけだし」


「いや……音は聞こえたんだけどね……」


俺はいましがたホテルで体験してきた恐怖体験をこめて答えた。




「BGMに焼死するときの幽霊の声が聞こえながらエッチな映像を見ても全然燃えないよぉ!!」

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