<第二章:再び、異邦人ダンジョンに潜れない>
<第二章:再び、異邦人ダンジョンに潜れない>
【115th day】
「シーカーブリゲイド。お前達のダンジョン探索を禁じる」
「は?」
翌日。
冒険者組合にて。
税金の支払いを済ませると、受付の奥から組合長が現れ僕にそういう。
「組合長、それはどういう事で? 僕らに何か問題が?」
心当たりはある。
喧嘩とか、乱闘とか、街中で魔法ぶっ放とか、建造物破壊とか、勇者をボコボコにして吸血して、お供と揃えて治療寺院送りにしたとか。
あ、九割ラナが原因だこれ。
「何ってお前ら、羽振りは良いだろ」
「まあ、そこそこ」
昨日切り上げた冒険では、中々の収入を手にした。
素材総額は金貨88枚。これの一割を、レムリア王国冒険者組合に納める。それでも儲けは中々の物だ。同期の冒険者の三倍は儲けている。
蜂蜜のほとんどを自己消費するにしても、かなり美味しい収入である。
「それと、順調にダンジョンを攻略し過ぎた」
「それは冒険者組合として褒めろよ。僕ら冒険者なんだから」
組合長は、小さい羽を持った色白の美少年である。
この容姿で、僕より遥かに年上だ。そして、最初から馬が合わない。今回も個人的な理由で妨害しにきたのかと勘ぐってしまう。
「ただでさえ、父上をパーティに入れた事で、他の冒険者から睨まれているのだ」
組合長と親父さんが、義理の親子関係なのは最近知った事である。
後こいつは、親父さんが僕らのパーティに加入する事を反対していた。何でも他の優秀なパーティから声がかかっていたそうだ。
評判はともかく、うちも優秀なパーティなんだが。
「加えて、同期の冒険者を大きく離して攻略している。最後までいわせるつもりか? 面倒くさい奴だ」
「他人の嫉妬を気にしろというのか?」
「そうだ。人の恨み妬みは名声に付き物、だがお前らのパーティは度が過ぎている。リーダーが異邦人である事も原因だし。王と親交があり、その娘を愛人にしている。ヒューレスの森の姫を妻にしている。付き合っている商会は急に名が売れ出し、それを良く思わない商会は何故か潰れている。
止めに、今一、不明瞭な手段で敵を倒している。竜亀も、階層の番人も、草原に出た獣のモンスターとやらも………ま、ペテンを疑うには十分過ぎる材料だろ」
「いやいや、しかし」
疑いだけでそんな。
僕は、明確な証拠は残していないはずだ。まあ、人を妬むのに証拠なんかいらないか。
「しかしも、なにもあるか。冒険者の横の付き合いは大事だぞ。疎かにする者は長生きしない」
「つまり組合長。再びダンジョンに降りる為に、僕は何をすれば?」
何となしに読めては来たが、
「組合に来る個人依頼をこなしてもらう。同じ冒険者からの依頼だ。格安だぞ」
「うげぇ」
同業者からの依頼か。
ラナが一度、それでハメられた事がある。冒険の手助けという依頼で、受けて見れば性犯罪者が待ち構えていた。
そのせいで僕は、こういう依頼に良いイメージがない。
たまーに他のパーティから依頼を懇願されるが、全て一蹴してきた。僕のパーティは自分達の冒険で手一杯だ。他人の面倒など見ている暇はない。
「で、組合長。依頼はどのくらい消化すれば?」
のだが、
今回は無視できないか。
「最低でも三つ。お前向きの依頼は幾つかあるが、一応希望を聞こう」
「メンバーを貸す事は絶対にしない。装備も然り。動けるのは僕一人だけ、という希望で」
「了承しよう。これを機に付き合いを広げろ。どんなに強くても、他のパーティが必用な場合もある。それと、組合の業務で一番の厄介事は、冒険者同士の争いだ。素手の喧嘩程度なら今後も見逃すが、次街中で魔法を撃ち合ったら国外追放処分にするぞ」
「重々承知した」
いずれ言われると思っていた。
ラナがフレイを倒す時、根城の馬小屋ごとやったらしい。巻き込まれた新米冒険者には、治療費他、装備を新調するという補償で何とか納得してもらった。馬小屋と共に宿も新築しました。
大変お金がかかりました。
マイホームの夢は、これで露に消えました。
「今回のダンジョン探索禁止令は、いうなれば積もり積もった罰則だ。お前らは率直に動き過ぎている。協調を覚えろ」
「そりゃそうっスね」
組合長の当たり前の言葉を、不良生徒のように返した。
やれやれだ。
そう簡単に先に進ませてくれないか。
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