<第四章:再会の時、来たる>【03】


【03】


 夜、落ち着いてからトーチに通信を繋ぐ。

 部屋の窓からは、平原に満ちた霧が見える。

「提案がある」

『なんであるか?』

「マリアの事だが、お前結婚には反対なんだよな?」

『で、ある』

「僕も流石に、今の妻と落ち着いていない状況で第二婦人は不味い」

『質問。第二婦人とはマリアを指すのであるか?』

「そうだ」

『貴公、離婚してマリアと結婚するのではないのか?』

「ラナと離婚するつもりは一切ない。後、エルフの法で結婚したから多婚してよいのだ」

『貴公は、日本人としてそれで良いのか?』

「僕の国にこんな言葉がある。『郷に入れば、郷に従え』だ」

『それが便利な言葉なのは理解した。余計、貴公とマリアの結婚には賛成しない』

「では、間を取ってだな――――」

 僕の提案は受け入れられた。


 翌朝、マリアと通話して。

「マリア、仮にトーチが増えたらどう思う?」

『嬉しい』

「ちなみに、トーチの国では父親三人で子育てをした事例がある」

『ほほぉ、ダディが三人か。それは良いな』

 映画だけどね。

「んじゃ――――」


 そのお昼。


「という事で、ラナ。僕の娘だ。マリア、こちらお母さんだ」

『………………』

 ラナとマリアを再び会わせて、そう紹介する。

「あなた、確かに子供が欲しいとはいいましたが、これは」

「ソーヤ。貴様を父親にもするとはいったが、これが母親になるとは聞いていない」

「いやいや、マリア。僕の妻なんだから、自動的にお前の母親だろ」

「あなた。私、全然状況が読み込めないのですが」

「妾が説明してやろう。おっぱいエルフ。妾は、ソーヤの妻にして、その娘である」

 妻である事は、

 帳消ししてくれなかったのかぁ。

「ソーヤの妻は私です。つまりあなたは、第二婦人という事になりますね」

 あ、ラナ。そこはすんなりと受け入れてくれるんだ。

 そだね、そういう文化で育ってるものね。メルムの野郎も奥さん沢山いるものね。

「第二婦人で、私の娘で、え、え?」

 なまじ受け入れたが故に、混乱しているようだ。

「ラナ。マリアの育ての親は、僕と同じ世界から来た奴だ。そのよしみで面倒を見る事になった。見ての通り子供だ。結婚うんぬんは聞き流してくれ」

「誰が子供か!」

 マリアは怒って僕に蹴りを入れる。あんまり痛くない。

 子供といわれて怒るのは子供の証だ。って、前にも誰かにいったな。

「同郷の頼みですか、それなら仕方ないですね。………えと、マリア。母です?」

 ラナはぎこちなく笑って、両手を広げる。

「………………」

 マリアは無言でラナを凝視した後、欲望に逆らえなかったのか胸に飛び込んだ。

「はふぁ」

 自分と同じ反応で、即落ちした。

 ラナのおっぱいに抗える者はそういない。如何に狂気を持っていてもマリアは子供だ。

 その後、二人の親交を見守りつつ。まったりとした時間を過ごす。

 ここ数日の慌ただしさが、ようやく落ち着いた。

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