<近域の魔王>6


『ソーヤさん! 出来ましたよ!』


 軽く眠っていた。

 時計を見ると三十分経過していた。

「ふわっ」

 妹が、びっくりして体を起こす。

『味見してください! といっても、マキナの味付けに問題があろうはずありませんがね!』

「エア、ちょっといいか?」

 寝ぼけ顔の妹を離して草原に寝かせる。ポンチョをかけると包まって、二度寝した。

「どれ」

 と、鍋に近づく。

 鍋の中身は焦げ茶色の液体である。浮いている具はシンプルに豚肉だけ。

 その正体は、異世界の材料で作り上げたカレーである。

 ただ、本当のカレーとは味付けの名称であり、この場合、正確には日本式カレーだが。まあ、カレーでいいよね。

 お玉で小皿に移して味見。

「うーむ」

 美味い。

 コクがあり、食材の旨みがラインダンスを踊っている。

 でも、

「ちょっと酸いかな。塩味も少ない」

『なん………ですと?』

 塩を追加。混ぜ混ぜとして、

「こう、味をもう少しマイルドに」

 マキナが持参したタッパーを見回す。その中に、

「これを入れよう」

 小間切れにしたチーズを発見。鍋に入れる。

「後は、これと、これも」

 牛乳と蜂蜜を追加。

 混ぜる混ぜる。

 僕の経験だと、小柄な種族は子供舌が多い。

 炎教の高位神官、治療寺院の高僧、その二人に料理を振る舞う機会があったのだが、偶然にも二人共、小柄な獣人族で子供舌だった。

 つまり、トマトの酸い味とかは苦手なはず。スパイスの苦味もだ。

 辛味は個人の痛覚耐性によりけり。唐辛子の粉末瓶があったので、これを自分で追加してもらおう。

 味見。

「うむ、マイルド」

 酸い味わいが和らぎ、塩気と旨みがストレートになっている。ご飯をかきこみたい味。

 大人には少し物足りない味付けかもしれないが、子供向けには喜ばれると思う。

『うぎぎぎ』

 マキナが悔しそうだ。にやにやと笑い返す。

「んで。何にかけるんだ?」

『蒸かしたジャガイモがあります。ゴブリンさんはジャガイモが主食だそうですよ。猫舌の方が多いので、デキ合いの物を持って来てあります』

「んじゃ盛るか」

 タッパーから茹でたジャガイモを皿に置いて、半分空けたスペースにカレーを流し込む。

 色合いが寂しいので、ジャガイモに乾燥ハーブをふりかけ、カレーには粉末状のチーズをかけた。合わせて、瓶詰のピクルスを輪切りにして三切れ、赤ピーマンのマリネを刻んで少し添える。色合い良し。

「こんなもんか」

『ぐぎぎぎぎぎ』

 マキナが悔しそうで楽しい。

 四皿同じ物を作ってテーブルに並べた。

 匂いに釣られ、エアが飛び起きる。びびっていた割に、臆せず席に着く。しかも魔王様の正面の席。

「お待たせしました。名付けて、ゴブリンカレーです」

「カレーとなー」

「カレーというのはですね。かつて同盟国だったイギリ――――」

 マキナに後ろから羽交い締めにされ、アームで口を塞がれた。

『ソーヤさん。緊急措置を取らせてもらいます』

 そんなに僕の話長いか?

 ゴブリンさんはスプーンを手に早速食べ始めた。

「おー、おおー」

 カツカツと口に入れる。ジャガイモをスプーンで小さくしてカレーに馴染ませ、しっかり味わって食べている。

「………………」

 魔王様も、スプーンを手にカレーを口に運んでいた。

 骨だよね? という僕の疑問は魔王様がカレーを口に入れた瞬間に氷解する。食べ物だけが、光に分解され吸収されていた。

「………………」

 無言でスプーンを動かしている。

 わからん。これは、わからんぞ。

「………………」

 僕の視線に気づいたのか、魔王様はちょんちょんと指でゴブリンさんをつつく。

 また耳打ち。一瞬でも可愛いと思ってしまった自分が恐ろしい。

「我が王はこういっている『これは我が秘儀、魔王術の一つ、ゲルムガンス・ネクロシア。我が口に入れた食物を分解して、味覚として再変換する高位魔法だ。恐ろしかろう? フハハハハ』あー食べるの集中したいんでー、残りは後で」

 二人共、食事に戻る。

「う!」

 妹はいつも通り、

「これ美味しい!」

 がっついて食べていた。

 こういう事をあまりいいたくないが、魔王、ゴブリン、一応エルフの姫、と目の前で食事をしているのだが、エルフが食事の姿が一番アレだ。

 魔王様とゴブリンさんが上品過ぎるだけか。

「お兄ちゃん! もっと辛くしたい。後、イモにマヨネーズ!」

「はいはい」

 マキナの拘束を解いて、唐辛子とマヨネーズの小瓶をエアの前に置く。

「こんなに美味しいーのに。エルフは失礼だなー」

「うるさいッ、ゴブリンうッるさいッ」

 唐辛子を豪快に撒いて、マヨネーズもドバッと。カレーとイモをグシャグシャに混ぜて食べる。

「んくぅぅうううう」

 妹は幸せそうだ。

 僕も席に着いてカレーを食べる。

 うむ、スパイシーだが甘口。子供っぽい味付けだが、食べやすくてイモが進む。肉トロトロじゃないか。

 ああ、お米。

 お米食べたい。でもなぁ、ラナがなぁ、楽しみに炊くんだよなぁ。残り3kgもないから一切無駄に使えないからなぁ。

「あ」

 ふと、見ると魔王様の皿が空になっていた。

「マキナ、おかわりを」

『はいはーい』

 マキナが近づくと魔王様が皿を差し出す。

「待ってマキナ! アタシもおかわり!」

『はいはいはーい』

 エアが負けじと皿を空にして、マキナに差し出す。

 ゴブリンさんはチマチマと食べる。

 深く考えるのを止めて、僕も久々のカレーに集中した。


 魔王様は、おかわり7皿。エア5皿。ゴブリンさん3皿、僕は2皿という結果になった。


「うぐ、骨のくせにどこに入るのよ」

「こらこら」

 妹の発言が怖い。相手、魔王だぞ。ラスボスかもしれないぞ?

 エアは、食べ過ぎでお腹を押さえていた。お行儀悪く草原に寝転がっている。

「エルフは行儀が悪いなー」

 ゴブリンにも指摘される始末。

 君ら二人のおかげで基本のイメージが崩れる。

「でもうん、本当にお行儀悪いぞ。椅子に座れ」

 軽く叱る。

 また泣かれると厄介なので軽くしか叱れない。

『あの~エア様。そもそも何故ここに? シュナ様とベル様、奥様は?』

 ひっ迫して忘れていたが、マキナの疑問は僕も気になる。

「あッ! ………忘れてた。通信機取りにキャンプ地に戻ったんだった。道中で二人見たから追跡してたの」

『お三方は今どこに?』

「たぶん、マスターの店でお酒飲んでる」

「戻れ。ラナが心配する」

「もうちょっと、お腹休めたら」

「うん、とりあえず椅子に座ろうか」

 ただでさえ、その生足が魅惑だというのに。はしたない。

「お兄ちゃん、だっこ」

 妹が両手を伸ばしてきた。

 おまっ人前だぞ。しかも、魔王の前だぞ。

「だっこ~」

 妹が手を振る。

 …仕方ないな!

 両膝の裏と脇に手を挿し込んで抱き上げた。俗にいうプリンセス抱っこ。テーブルまで運んで椅子に降ろ、降ろせない。首に両手が回されている。

「エア、手を離せ」

「ヤ」

 頼む。頼むから時と場所と相手を選んでくれ。

 どこの世界に、魔王の前で妹とイチャイチャする人間がいる。そんなんで死んだら、笑い者にもならないぞ。

「マキナ」

『はーい』

「あ、ちょっとお兄ちゃん!」

 マキナのアームの上に乗せて妹引き剥がす。

「拘束、そのままキャンプ地まで運べ」

『了解です』

「ちょっと~~~~~~っ!」

 マキナは中々エロい感じにアームを絡ませ、エアを運んで消えていった。

 付き合ってられない。心労で戻しそう。

 魔王様に振り向く。

 ただ今、ゴブリンさんと一緒に食後のお茶を飲んでいらっしゃる。

「大変、ご迷惑と失礼を!」

 土下座である。

 まさか、異世界に来て日に二度も土下座をするとは。

「我が王はこういっている『異邦人よ面を上げよ。このカレー、非常に美味であった。スパイスのレシピを進呈するというなら、全ての罪を忘れ―――――」

 ゴブリンさんが魔王様につつかれる。

「えーあのエルフ失礼でしたよー?」

「あの、レシピなら別に」

『ダメ! 物の製造工程は大事にしなキャ! レシピなんて簡単に人に渡してはダメ!』

 今の、声。

「魔王様。あのーうーん」

『わたしもお喋りしたい!』

 骸骨から女性の声が響く。幼くはないが、幼く聞こえる。

 ええーと、何といいましょうか。萌え声といいますか、アニメ声というか、蜂蜜とガムシロップを混ぜたような甘ったる~い声だ。

『あらためて挨拶させていただきますわ。ゴルムレイス・メルフォリュナ・ギャストルフォです。今でこそ魔王の座に就いた悪霊ですが、かつては豊穣神ギャストルフォの末裔として、右大陸の繁栄に努めた冒険者です』

 僕は、しばし無表情になり、緊迫した状況と色々な感情が押し寄せて、

「ぶふっ」

 吹き出した。

『酷い!』

「すみ、すみま、ぐふッ。ぶ、くく、ぶふふ」

 駄目だ。耐えれば耐えるほど笑いが。

 声が、声が面白すぎる。骸骨なのに萌え声。骨でめっちゃ威厳ある姿の魔王が、こんなシロップボイス。

 あかん。あかんて。

 失礼と分かっていても表情筋が抑えられない。地面を叩いてしまう。きっと普段の精神的な疲れもあるのだろう。感情が爆発して、まさしく爆笑しそうになり。

 アガチオンの刀身の腹で頭をガンガンと打つ。

「た、大変失礼を」

 よし、痛くて笑う所ではなくなった。

『あの、血が』

「大丈夫です。軽症です」

 昼間なのに星が見える。

「ほらなー」

『前も爆笑した人いたけど何なの?』

 魔王様が両手を組んでフルフル動く。乙女ちっくな動きで刺激しないでくれ。

 ゴブリンさんに『いえよ』と視線を送る。

 あ、そっぽ向かれた。

『さておき、食事のレシピしかり、物造りの工程しかり、技術の種火は大切にしなくてはいけません。どんな苦心を重ね生み出したとて、世間にはそれを奪い、我が物顔で自分の物だと嘯<うそぶ>く輩が沢山いるのです。分かりましたか?』

 良い事をいっているのだが、声と姿のアンバランスさに破顔しそうになる。

 見えない所で腿をおもいっきりつねって耐えた。

『取りあえず、その情けない体勢は止めなさい。さっきのエルフっ子が戻ってきたら、また面倒を起こしますよ』

「あ、はい」

 土下座終了。

 草っきれを払って立ち上がる。

「あいつ、気配殺すの上手いなー。エルフ怖い。超怖い」

「ありがとうございます」

 妹を褒められて照れる。

「お前、やっぱ変わってるなー」

『さて異邦人。カレーのレシピを、ど~~~~しても進呈したいというなら、こちらも条件があります。これを受け取りなさい』

 魔王様がマントから針を取り出す。

 よく見ると複雑な紋様が刻まれている。禍々しい。

「何ですか? これ」

『その手甲の鍵』

「は?」

 右腕の手甲を見る。

 ヒューレスの手甲、正確にはヒューレスが想い人であったルゥミディアに送った物。彼女の死後も、ヒューレスの氏族に脈々と継がれた品。

 微量な魔力を秘めた、今では作れない装備だが、

『その手甲、わたしが大昔に作った鎧の一部。そこだけでも残っていたとは意外。たぶん、外せないよね?』

「外せません」

 この手甲。肌の一部になったような着装感で、たまに着けている事を忘れる。マキナの解析によると抗菌素材で衛生的には問題ないらしい。

 何度か剥がそうとしたが、僕の神経の一部が金属と癒着して激痛が走り、これとして損な事もないので解体作業は中断した。

『確か………内側右寄りに小さい穴が』

 見ると、確かに小さい溝があった。

 針を受け取ってそこに差し込む。

「え」

 パカランと手甲が割れて草原に落ちた。

 久々に自分の右腕を見た。別に変わりはなかった。

『これで安全』

「ん、安全とは?」

 手甲を拾い上げる。これ、危険な物なのか? 亡霊が見えた事はあったが。いや、今も憑かれているのか。

『悲しい事に、それは古いエルフが呪力で機能を侵した。効果は魅了と隷属。これであなたの精神は自由になったはず』

「え」

 頭が混乱した。

「ああ、自分エルフに洗脳されていたんか。大変だっなー」

 傍に寄って来たゴブリンさんに同情される。

 ゴブリンと魔王が両サイドにいるこの状況こそ、洗脳されそうだが。

『何か心当たりはない?』

「心当たり」

 手甲を付けたのは、馬鹿王子と喧嘩して痛み分けした時だ。

 治療の為、ラナが僕に着けてくれた。その後、僕は英霊に導かれるまま戦い。彼女を助けた。それが?

『その顔、あるようだね』

 あれは僕の意思だ。僕の意思で戦ったはずだ。

 だかしかし、その意思すら曲げられたものなら、僕には認識すらできない。

「では僕がラナに欲情している気持ちは、刷り込まれた物だと?!」

 混乱した頭で言葉をぶちまける。

『えっと、それはどうなんでしょう?』

「尻、太もも、そしておっぱい! に、おっぱい! それにむしゃぶりつきたい欲望は呪いだと! 眠った彼女の髪を毎日嗅いでいるのは呪いと?! こっそり指や鎖骨を甘噛みしたのも呪いだったとはッッ。胸に顔を埋めて見たり、それに妹の腰と足をッ」

『それはあなたの性癖です。何でも呪いのせいにしないでください』

「はい」

 僕は変態だったのか。薄々気付いていたが。

 今日会ったばかりの人に何て告白を。

「ちょっと自分なぁ。もう一回着けてみ」

「あ、はい」

 ゴブリンさんにいわれ手甲を着ける。

「今からいう事、復唱しいー『エルフは傲慢、諸悪の根源、自惚れ屋、自己陶酔者集団、ええ恰好しい、鼻に付くクソッタレ種族』どうぞー」

 ええー。

「え、エルフは傲慢、悪い、自惚れ、自己中集団、格好良い、鼻に付く、美人、スタイルが良い」

 悪い気がするのでオブラートに包んだ。

 それを聞いたゴブリンさんが難しい顔をする。魔王様と少し離れて、しゃがみ込んでヒソヒソ話。

「これ、かかってなくないかー?」

『年月で摩耗した?』

「摩耗しないだろー」

『異邦人だから影響を受けない?』

「ないなー」

『個人の特異体質?』

「ありうるー」

『研究したい』

「あかんでー」

 怖い怖い。怪人に改造される。

「あの、僕の方で心当たりが一つ」

『え、何?』

 だから、その可愛い声とポーズで振り向くの、止めてもらえますか?

「僕の契約した神様の力かと」

『神? 呪力を弾ける神なんて聞いた事ないけど』

「僕が契約している神の名は、ミスラニカです」

『ギャスラーク知ってる?』

「しらんー」

『ミスラニカ亡国と同じ名前の神。右大陸の全神を認知しているわたしが、知らない神。わたしの認識から消えているだけ? 忘却されし神。忌血の獣を倒した金瞳の獣と契約して―――――』

 魔王様が考える人のポーズを取る。

 考え中に悪いが、気になる疑問を一つ訊ねる。

「あの、その金瞳の獣とは?」

『大陸北部の氷都ネオミアから発生した吸血鬼を滅ぼし、全滅した英雄達の総称』

 全滅? 一人生き残りを知っているが。

『古い言い方だと、終の戦士、エンドガード、凶月の使徒、そして金瞳の獣。金瞳の獣とは狼の事。狼とは、北部に住む大きい四足獣の名前よ。古代の慣習では、狼は死者を喰らい冥界に誘う、死の象徴とされていた。それ故か、狼の瞳はね。魔を射殺す金の浄眼なの。あなたの瞳の事よ』

 マキナが確か、時々虹彩が変化しているといっていたな。

 金色の目か、ちょっと格好いいかも。

『あなた、面白いわ』

「はあ」

 あなたほどではありません。

 手を取られ、魔王様の両手で包まれる。骨だが冷たい。

『死んだ時は一言頂戴、体を研究したい』

「は、はい」

 死んだらいえません。

『開錠針はいらないわね。でも、カレーのレシピ欲しい。どうしようかな。他にヒムが喜びそうなアイテムは………無味無臭の暗殺毒とか、部屋に置くだけで人間を衰弱させる壺とか、惚れ薬とかあるけどいらないかしら?』

「いりません。あ、いえ。たまには手甲脱ぎたいので針はありがたく頂きます。そもそも、マキナを助けてもらったお礼としてレシピくらい」

『駄目ッ! 足りないッ。魔王の名に賭けてこんな手安い取引はできない!』

 お堅いな、魔王。

 とりあえず、手が冷たいです。感覚が無くなってきました。

 早く離して欲しいので適当な事をいう。

「んじゃ、ご近所さんですし。うちのマキナとたまに遊んでやってもらえますか? 非常に寂しがり屋で、僕らが冒険に出ている間の奇行が、世間にどういう影響を与えるか不安でして。レシピは後であいつに送らせます」

 留守中、マキナを討伐されたらたまらん。

 草原に出没する柱のゴーレム。討伐すると金貨5枚の報酬である。このゴーレムとは、マキナの事だ。

 ただ今、クエスト取り消し申請中である。取り消し申請は時間がかかるのだ。

『それはつまり、マキナをわたしの従士にすれば良いのですね』

「そこまではいっていません。もっと軽い付き合いで」

 人工知能を魔王の従士にしたら、とんでもない事になるぞ。

 悪い人(骨)には見えないが、一応魔王だし。世界の半分とかいいそうだし。そういえば、この異世界。勇者とかいるのかな? 魔王といえば付き物だけど。

『軽い付き合い。中々難しいですわ』

「魔王様、友達いなかったからなー。ヒムには技術体系盗まれるし、獣人には飯たかられるし、酷いのがエルフで、財産根こそぎ貢がせて森の土壌改造させた後、結婚の約束までしてポイ捨て。極貧にあえいで、その後、良かれと思って王殺し。石投げられて、人間不信で引きこもりー」

『………………』

 魔王に相応しいハードな人生だ。

 魔王様が、ようやく手を離してくれた。指が動かない。霜焼けになっている。

『つまり友達になれと?』

「あ、はい」

 大丈夫か、大丈夫だよね?

『友達、異世界からのお友達。フフっ』

 嬉しそうな声だ。

『仕方ありません。魔王ゴルムレイスの名に賭けて、マキナの友人になって差し上げますわ』

「お願いします」

 こうして僕は、現代の人工知能と異世界の魔王の間に、友人関係を築かせた。

 後で、大変な事にならなければ良いなと神に祈るばかりだ。


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