曼珠沙華の少女

@ikakusuzume

第1話

「かわいい子、おやすみなさい。いい夢を見れますように」


そう優しくいうドレスを着た女に面白い格好だなあと思いながら前世の記憶を思い出した私。

平成の世で生きた国家公務員の記憶を持っているようだ。

国家公務員といっても裏方も裏方、暗殺部隊の隊長と教官をやっていた。そのためある程度の武器は使える。

名前はなく号は曼珠沙華、性は女、育てられた場所は山の中。齢が10を超えるころには両手両足の指の数を超えるくらい殺していた。かわいそうと思ったことはないし殺すのに失敗したこともない。

15になるころには拷問もした。血を洗い流すのが面倒だった。

25歳で私は死んだ。強敵と刺し違えての死だった。


そんな記憶を持つ私がいるのはどうやら中世のような場所だった。

そして、今気が付いたのだが隣に赤ん坊がいる。(私が赤ん坊なのは承知している)

同じようなベッドに同じような服。多分この赤ん坊は私に近い関係にあるのだろう。そして、ドレスの女はこの赤ん坊に向かってさっきの言葉を吐いたんだな。



それから4年が過ぎた



どうやらあの時の赤ん坊は私の姉だったようだ。

そして私は、空気のようだ。父と母は姉には甘いが私の存在にはきがつかない。いや、無視をしているのだろう。理由は知らないが。


父が言うには姉は聖の力がある(私は闇らしい)。母が言うには将来絶世の美女になる(私は醜いからといって仮面を支給されている)。メイドによると近くにいるだけで癒される。(対する私は吐き気を催すという)そのほかにもまだいろいろあるが私は疎まれているようだ。

別にどうでもいいが。

もちろん待遇にも差がある。私の部屋はベットが一つと椅子があるだけのわかりやすいイメージでいうと監獄だ。そして付き人はいない。ジメジメしていないことは救いだと思う。

姉はだだっ広い廊下で見た時には乳母に抱えられながら後ろにはたくさんの護衛とメイドが付いていた。

部屋は知らない。だって近づいたら兵士に追い払われるから。私の体が前世の体だったら簡単に殺せたのに。


とっても残念。


そんなことをのんきに考えているが、私の体は売られるようだ。

どうやら、姉の乳母の一人が母に命じられ金のために売るらしい。というわけで私は今、町外れのごみごみしたスラム街のようなところにいる。高く売るためにか服はお貴族様の子弟が着るようなものだ。

「ねえ、たかくうれるといいね」

乳母さんに話しかけてみる。そうすると乳母さんは顔を引きつらせて悲鳴を短く上げた。

懐かしいな、この声。


さあ、お遊びの時間だよ?




あーあこのおもちゃ(乳母さん)すぐに壊れちゃった。

御飯のたびに少しずつナイフを集めてたんだよね。切れ味は悪いけど暇な時間は多かったから何本か残して研いどいたんだ。

研いでないナイフは切れ味が悪いけど拷問とかするには十分。

研いであるナイフは触っただけでも指が切れるから急いで殺したいときとかにぴったり。

今回は贅沢に両方使ってちょっとずつ切っていった。って言いたいところだけど奴隷商人がきたら邪魔されちゃうかもしれないから首をすぱっと一撃。骨と骨の間を狙って。

深紅が噴水みたいにあふれ出る。


あぁ綺麗。



さてこの後どうしよう。ここら辺に住むにしても少しくらいお金がほしいなあ。

奴隷として売られるのもまた一興だよね。


下克上ゲーム。

楽しそうじゃない?


そんなことをるんるん気分で考えていたら、人が通りかかったようだ。まだ、12~15歳の少年のよう。

「ねえ、そこのお嬢さん、僕たちと一緒に旅をしない?」

予想外。まさかお誘いをかけてくれるなんて。

「おにいちゃんだあれ?」

幼い声で言ってみる。

けど、鬼の面をかぶった幼女がそんなこと言っても不気味なだけだ。ちょっと、反省。

少年はそんな不気味な存在にも真面目に答えてくれた

「僕は君を買い取りに来た奴隷商人」

「おにいちゃん、わたしをどこかにつれてってくれるの?」

「売る気、なくしたから僕と一緒に旅に出ようか

お嬢ちゃんのお名前は?」

「わたしのなまえは…んーない。」

元いた城で名前らしきものを呼ばれた記憶はない。せいぜい忌み子くらいだろう。

「名無し?」

「せいかい!」

「じゃあ今日から君の名前は鬼姫。姫の黒い髪、時々変わる眼の色、真っ白な肌にぴったりだ」

目の色が変わるのか…そりゃ城の人たちも気味悪いと思うよな。

「いまのめのいろは?なにいろ?」

「黒。僕が声をかける前…姫がそこの女を殺しているときは紅い眼をしていたかな」

どうやら、みられてしまったようだ。

「わたしのこときもちわるい?」

「姫は誰よりも綺麗で誰よりも清らかだよ」

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