Chapter4

Side御園

今日は、癒凪の結婚式。


大丈夫だ。今日のために計画は練ってきたじゃないか。


癒凪には俺が何をするのかは伝えていない。

ただ、これを実行してしまうと、俺はもうこの世界には戻れない。


煌びやかな装飾品に囲まれ、高級な食材を使った料理を食べ、いつでも召使いがいて、やりたいことはほとんど叶ってしまうこの世界には戻れない。


でも、それでもいい。


癒凪がいるなら、それでいい。

癒凪とならどこまででも行ける。

そんな気さえしてたんだ。


さっき、癒凪の婚約者と話した。

俺とは正反対で、とても好青年だった。

名前はなんだったかな。


まぁ、そんなことどうだっていい。

俺が奪うのだから。もうこの気持ちをおさえつけるのは嫌なんだ。


癒凪の隣は俺じゃないと。

癒凪には俺がいないと。

癒凪には…、俺しか…。


あの夜聞かせてくれた癒凪の言葉、あれは「助けて」ってことだよな?


大丈夫、「俺」が「助けて」あげるから。


すれ違う人は皆、少し緊張したようなそれでいて嬉しそうな、まるで恋愛映画を見る前のような顔をしていた。


「○○財閥のご子息様なのでしょう?」

「さぞ、美しいことなのでしょうね〜」


なんて、どうでもいい会話。


今、癒凪は身支度を終えた頃だろうか。

婚約者、いや、アイツは婚約指輪の用意をしているのだろうか。いや、もうお互い着けているかな。


そんなことどうだっていい。


俺は着ていた窮屈なジャケットを脱いだ。

こんなものは邪魔だ。


さぁ、もう2人が出てくるだろう。


あの二人で終わるハッピーエンドの恋愛映画なんて俺にいらない。


俺はモブなんかじゃない。


俺は主役になってみせるんだ。


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Mad love 冬凪 @azusa1028

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