えぴろーぐ

えぴろーぐ

「ライオンとの合戦もようやく一息ついた事だし暫く合戦はお休みにしよう。各自故郷に帰るなり存分に今までの疲れを癒やすと良い」
















初めてライオンとの合戦で引き分けに持ち込んだ52回目の合戦の後のこと。

ヘラジカ様が拙者達にお休みをくれたのでござる。

思えば合戦が始まって以来、こういう大きな休暇は無かったでござるからなぁ…皆舞い上がっているようでござる。




「皆はどうするのでござるか?」

「私は一旦アジトに戻ろうかなー。センちゃんに報告もしないとだしねー!」

「私は故郷のなかべちほーに帰りますわ。残してきたクロサイとスマトラサイの事も心配ですし」

「わ、私もアジーさんに会いに帰省するですぅ」



うっ…やっぱり皆故郷に帰るでござるか…。

確かに拙者達は生まれも育ちも皆バラバラでござるからなぁ。

故郷というものを知らぬ拙者にとっては羨ましい限りでござる。



「ハシビロコウ殿は?」

「私は特に…。図書館か温泉にでも行こうかなって…」

「としょかん……う゛っ…頭が……」

「…どうしたの?」

「い、いや何でもないでござるよ…」




結局あの後お師匠達に文字通りキツ~~~~いお仕置きを受けた拙者は、もう一度初心に返り今こうしてヘラジカ軍団の一員としてへいげんちほーの平和を守っているでござる。

思えば拙者が入った頃から既に十数回やっていた合戦も気が付けば52回…仲間として迎え入れられたのがもう随分と昔の事のように感じられるでござる。

そう言えばあれから拙者も忙しくなってしまってお師匠達にも会っていないでござるね…。

確かにちょうどいいタイミングだし一度報告に戻るのも有りでござるが…でもやっぱりちょっと帰りづらいというか…そうでござる!



「ハシビロコウ殿!もしよろしければ拙者も一緒にとしょか…」

「邪魔するぞコラ」

「…ゴリさん?」



あの方は確かジャパリパーク警察班の刑事さん…?

何やらハシビロコウ殿と話し込んでるようでござるが…あ、連行された。




「い、今のは何ですの…?」

「んー…懐かしき同僚との感動の再会!みたいな?」

「ぜ、全然そうは見えなかったですぅ…」

「………」









~としょかん~


「…結局ひとりで来てしまってござる…」



しかし久々に戻ってきたからか、この妙な懐かしさは何でござろう…。

それにやっぱりここにいると落ち着くでござる。

へいげんちほーから運ばれてきた風と長い間木漏れ日に照らされてできたこの独特の本の匂い……に混じって今日は何だか今までに嗅いだ事のない良い匂いがするでござるね…。




「…おい、そこで何をしているですか」

「し、お師匠!?」

「はぁ……。お前も帰ってきたならお昼ご飯の準備を手伝うですよ」

「働かざる者食うべからず、なのです」

「準備、でござるか?それならジャパリまんで……あ!?これって…」



お師匠に案内された食卓には何やらおどろおどろしい見た目の物体が盛り付けられたお皿が三枚…それはもう美味しそうな匂いを漂わせていたのでござる。




「これは何でござるか?」

「かれーです。先日かばん達が来てこれを作っていったのです」

「おぉ!かばん殿が!」


良かった…無事ここに辿り着いたのでござるな。

しかし確かかばん殿は自分が何の動物か調べる為に図書館に向かったと聞いていたでござるがそれが何故このようなものを…?


「まぁまずは一口食べてみるのです」

「ちゃんとふーふーしてから食べるのですよ」

「で、ではいただきます…でござる」




これはーッ!?

一口目のキツ~~~~い刺激とは裏腹に食べれば食べるほど病みつきになるこのまろやかなコクととろけるような舌触り……。

美味い…美味過ぎるでござる!!



「やはり久しぶりに家に帰って食べたくなる料理ナンバーワンはかれー、というのは本当だったようですね博士」

「そうですね助手。おふくろのあじ、というやつなのです」

「それを言うならふくろうの味、では?」

「うまいですね助手。まるでこのかれーの様なのです」

「そういう博士こそ」

「いえいえ助手の方が…」

「いえいえいえ博士の方が……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

パンサーカメレオン「拙者は忍者のたまご…にんたまでござる!」 こんぶ煮たらこ @konbu_ni_tarako

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ