第5話 2120/4/2

今日は紫陽花高校の入学式だ。新しい生徒達が大きな制服に身を包み、希望と不安の混ざった表情でその日を迎える。事務局員として仕事をしているうちによく見た女子高生がいた。クラスの掲示を確認しているショートヘアーの女の子である。

「茉帆、この学校に通うことになったんだな。保護者なのか職員なのか分からないけど。」俺は浅尾進という男で、彼女は神城茉帆という名前で親子関係であることなんて分からない。

「浅尾君。副校長がお呼びである。職員室に向かってくれ。」事務局長に言われるがまま、職員室に向かった。


「浅尾君。君をスクールカウンセラーとして起用したい。」

「これはどういう風の吹き回しでありましょうか。」

「スクールカウンセラーが暫く産休に入ることになった。そこで君に臨時でスクールカウンセラーとなって欲しいのだ。」

「でも、基本的に外部の人間だからこそしがらみなく相談に乗れるんじゃないですか?」

「確かにそうかもしれない。だが、事務員は一定の距離を保っている。是非とも浅尾殿にはお任せしたいのだ。神城さんのこともあるしな。」

「それより何故、母上はこの紫陽花高校にいるんですか?」

「書いてあったんだよ。入学願書が来ていてな。」


母は若返りを果たす以前に紫陽花高校に入学しようと思っていたようだった。自分の息子が働いているからそれを頼りにしようと思ったのかもしれない。

「そうですか。なら微力ですが、兼任で勤めさせてもらいましょう。」


スクールカウンセラーは基本的に仕事が無い方が良い。生徒達が通常悩みを話すのは、友達自身である。いじめられていたらまた違う友人に打ち明ける。その次に担任の先生、最終手段的な役割だ。


浅尾進はカウンセラーとして新たな一歩を踏み出すことになった。

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Essence:2120 Ich pflege Meine Mutter! 恋住花乃 @Unusually_novel

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