伊達マスク

9741

伊達マスク

 私は常にマスクを着けている。 

 別に風邪を引いているわけでも、人と話したくないわけでもない。 

 私はすこぶる健康だし、お喋りは大好きだ。 

 

 じゃあ何故マスクを着けるのか。簡単だ、顔を隠すためだ。 

 私の顔を見た人は、全員嫌な顔をする。私はブサイクなのだ。 


 そんなブサイクな私に恋人ができた。 私にはもったいない、素敵な男性。楽しいデート。ドキドキしながら散歩。幸せな時間。 


 デートの最後に、私達はキスをしてお別れすることになった。 


 私は躊躇った。マスクを外すのが怖かった。 

 でも彼と口付けしたかった。 意を決して、私はマスクを外した。 


 彼は叫んだ。喜びの叫びではない、恐怖の叫びだった。 

 彼は私の前から逃げ出した。


「……やっぱりダメだった」 


 私は口裂け女。今日もマスクをして生きる。

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伊達マスク 9741 @9741_YS

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