第3話貸し1

入学式から一夜明けた

結衣「お兄ーーー!!」

光「...んん、なんだ?」

結衣「朝ご飯ー!!!」

光「んん...え!!?やばい!!」

光は寝坊した。珍しく結衣が早く起きていたことに光は驚いた。

光「やばいやばい、奏がくるーーー!!」

結衣「お兄また試作してたのー?」

光「ああ、まあな」

光(...いつぶりだろうな、こんな時間に起きるの)

結衣「お兄、悩みでもあるの?」

光「え?」

結衣「お兄が試作長引く時は大抵なんかの気晴らしだもんねー」

光「そ、そうか。よく知ってるな」

結衣「何年一緒にいると思ってんの?」

光「はいはい、ほらフレンチトーストだ」

結衣「わーい!おいしそー!あれ?お兄食べないの?」

光「試作で味見を何回かしたから腹減ってないんだ」

結衣「何時までしてたの?今日テストでしょ?」

光「ああ!しまった、今日か!!」


ピンポーン


光「え!!やばい!!今行くー!!」

結衣「行ってらー、....だからなんでテスト忘れるんだろう。あれがうちのお兄なんだけど、あーあまた赤点ギリギリかなあ」

結衣はあきれながら光の作ったフレンチトーストを頬張る

結衣「んー、おいしー!!お兄が女の子だったらいいお嫁さんになれるのになー、将来のお兄のお嫁さんが可愛そうだなー」


奏「遅かったなあ」

光「すまん、ちょっと寝坊したんだ」

奏は不思議な顔をした

光「どうしたんだ?」

奏は少し黙って、

奏「いや、お前にまた好きな女ができたかー!って思ってな!」

光「は?...んなわけねえだろ」

奏「冗談に決まってんだろ」

光「冗談でも言わないでくれ、頼むから...」

光はまた思いつめた顔になった

奏「...で?何を試作したんだ?」

光「それはあとの楽しみにしとけよ」

奏「お!その顔はいいもんできたんだな!」

光「まあな、行こうぜ」

奏「おう」

光は普通の元気な顔に戻り自転車をこぎ始めた。


一方、望愛はというと

望愛母「望愛ー!!起きて、って起きてるの?」

望愛「うん!」

望愛は珍しく早く起きていた、母が起こす前に起きてることなんて滅多にない。

望愛「光くんに早く会いたいんだー」

望愛母「え!!?」

望愛「どうしたの?」

望愛母「何!?彼氏できたの!?入学初日で!?」

望愛「え!!?あのお母さん...」

望愛母「だったら、今度うちに連れて来なさいな!歓迎するわ!!」

望愛「ち、違うって!!光くんは学級委員のペアで、お隣さんで、ちょっと無口な人なの!!」

母はがっかりした顔をした、

望愛「...なんかごめんなさい」

望愛母「ええ、いや気にしなくていいのよ。お友達なんでしょう?」

望愛「いや、それが...」

望愛母「違うの?」

望愛「光くん、女子があんまり好きじゃないみたいで全然お話してくれないの」

望愛母「それでムキになった訳ね」

望愛「うん、今日こそはお話するの!テストだからもう行くね!」

望愛母「はーい、行ってらっしゃい、...光くんか、どんな子かしらね」


~~~学校~~~


望愛「光くん!!聞いてるの!?」

光「だから、なんだよ...」

望愛は光に懲りずに話しかけていた。

美穂「懲りないねえ、あんた。光くんごめんね、この子あんたと仲良くなりたいだけなんだけど」

光「...」

美穂が止めに入ったが、止まらなかった。

望愛「光くん!空いてる日いつなの!?遊びに行こーよ!」

光「...俺は女子とは遊びたくねえから、ごめん」

そう言って光は自分の席に戻った。

望愛「もおー!なんでなのー!」

美穂「あんたも懲りないのねえ」


宇野先生「テスト始めるぞー、席につけー!」

みんな席に着いたが、光はあることに気づく

光(え?筆箱忘れた!?)

カバンを漁るも出てこない

光(しまったなあ、試作品持ってくることしか考えてなかった)

望愛「ひーかるくーん?」

光「...今度は何?」

望愛「筆箱忘れたのー?」

光はビクっとなった

望愛「やっぱりねえ、貸そうか?」

光「いや、別にほかの人に借りるよ」

宇野先生「答案用紙配るぞー、カバンも筆箱もしまえよー」

光「...」

望愛「どうする?」

光「...貸してください」

望愛「うん!いいよ!」

光(くそおお)

望愛はペンを持った手を光の方へやったが光にとらせなかった。

光「何すんだよ!?」

望愛「貸し1だよ〜」

光「...わかったよ」

望愛「わーいやったあ」

美穂(鬼だなこの女)

望愛はペンを貸し、テストが終わった。昼休憩となり、望愛は光に近寄る

光「で?俺に何してほしいんだ?」

望愛「んー、どうしよっかなー」

光「早く決めろよ」

望愛「決まってるよ、最初からね」

光「...何?」

望愛「友達になって!」

光「え?」

望愛「だから友達になってって言ってるの」

光「...わかったよ」

望愛「ありがとー、じゃあお昼食べよっか」

光はあっさり承諾してしまった、その顔には少しだけ不安が募っているようだ

美穂「光くんごめんね、女子嫌いだろうけど仲良くしてあげて」

光「困るんだよ」

美穂「そう」

光はため息をついた

望愛「あれ??え?」

望愛はカバンを漁るも弁当が見当たらない

望愛「あー!お弁当忘れちゃったあ!!」

美穂「は?バカだねえあんた」

望愛「どうしよう...」

光「弁当忘れたのか?」

望愛「うん、どうしよう」

光はカバンから2つ弁当箱を取り出した

光「これ食えよ」

望愛「え?でも...」

光「俺の弁当はこれだ、これは昨日の夜試作した品だ。本当は友達にやる予定だったんだけど、やるよ」

望愛「いいの?」

光「ああ、ただし...」

望愛「?」

光「貸し1な」

望愛「むーーー!!」

望愛は渋々弁当を受け取った。蓋をあけると

望愛「え?なにこれ?」

それは弁当とは言い難い、高級レストランで出されるような品々だった。

光「その米はチキンライスだ。おかずに、牛肉を使ったカツ、卵焼きにはうなぎが入っているから横のトマト煮込みの甘だれをつけて食ってくれ。そんでもって最後さっぱりするためにベリーソースのかかった特性フルーツタルトだ」

望愛「...これ、光くんが作ったの?」

光「ああ、言ったろ?料理が得意って」

美穂「え!?すごーい!!」

「え?なになに?」

「わー、オシャレー!!」

「なんだあれうまそー!!」

クラスのみんなが光の料理を褒めた

光「...」

望愛「ありがとう、いただきます」

望愛は光に感謝して弁当を食べた

望愛「んー!美味しい!!こんなに美味しいの食べたことないよ!」

光「なあ、...岩見、ペン貸してくれてありがとな」

望愛「いいよー、気にしないで。友達になれたし」

光「...なあ、そのことなんだけどさ。」

望愛「ん?貸し1で取り消したいの?」

光は少し黙った

光「まあ、そういうことなんだけど」

望愛「...ねえ、私のこと嫌い?」

光「いや、なんとも思ってないよ」

望愛「なによ、それ」

光「俺は女子とは関わらないって決めてるんだ」

望愛「なんで?」

光「...聞かないでくれるか?」

望愛「わかったよ」

光「ありがとう」

望愛は残念そうにした

望愛「でも、諦めないからね。」

光「...はは、面白いやつだな。...ごめん。」


~~~帰り道~~~


奏「それで、望愛ちゃんに弁当あげちゃったわけね」

光「すまん」

奏「いいっていいって、あと今日は試作すんなよ」

光「ああ、わかった」

奏「俺はお前のことちゃんとわかってるからな」

光「俺は女子と一緒にいるのは無理だよ。トラウマなんだ」

奏「わかってるって、でも、望愛ちゃんすごい不思議な子だな、お前にここまで接近するなんて」

光「俺もなんか面白いって思うよ、でも申し訳ないや」


フードの女「...」











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