ー 4.5 - トマドイ
「――聖が…好きだ」
時間が、止まった。
境界線。
踏み越えたのは彼。
暗黙の了解。
恋愛対象にはならない。
突き放したのはあたし。
思考が凍る。
時間が止まる。
欲しいもの。
欲しかったもの。
ずっと、探しているもの。
手に入れたいともがくほど、それは遠ざかっている気がして。
いつのまにか、お互いに。
諦めかけてしまっていたもの。
諦めかけて。
でも手放せないで。
曖昧なままの馴れ合いが続いていた………
「じょ…冗談でしょ?」
自分の声が、いままででないほど、頼りなく聞こえた。
冗談。
冗談だよね。
そうだといって欲しい。
だけど違うと告げて欲しい期待。
相反するココロ。
戸惑い。
ねぇ、なんで?
何であたしは、今ここにいるのだろう。
境界線。
踏み越えたのは彼で。
突き放したのはあたし。
それで、おしまい。
…そのはずだ。
なのに、どうして。
―――矛盾する。
「冗談じゃ、無い」
きっぱりと、言い切られた。
期待していた?
その答えを、あたしが?
「聖が、好き」
真摯な眼差し。
真剣な声。
今まで、たぶん…絶対。
こんな彼は、見たことない。
ダメだよ。
そんなに、真剣にこないで。
見たことない顔見せないで。
曖昧なままで、いられなくなる。
矛盾するあたし。
何がいけない。
何かが違う。
ココロが鳴る。
シグナルを鳴らす。
気づけよと。
矛盾。
怖いことは何?
最初から、頭でなんか考えなければ良かったのに。
知りたくなるじゃない。
君のこと。
もっと、いろいろ。
色んな顔を。
いろんな声を。
だって…そうでしょ。
「――……」
口を開きかけて…
止まった。
何を、言いかけた?
「だって…」何?
どうして。
彼が、スキなの?
答えなんかない問い。
疑問符ばかりが頭を占める。
どうしたらいい?
どうすればいい?
瞳をそらして、俯いた。
見つめないで。
そんな目で見ないで。
わけがわからなくなる。
流されてしまいそうになる。
あたしも好きだと。
言ってしまえば、このトマドイは消えるの……?
そらされる視線。
俯くしぐさ。
それら全てが愛しくて。
―――抱きしめた。
触れるぬくもり。
彼女のトマドイ。
伝わるココロ。
初めてのオモイ。
―――キスをして。
初めてのときみたいに。
ただの男と女で。
探して。
探すものは?
あの時はなかった。
だから探した。
曖昧なまま身体をかさねた。
どこにあるのかわからなかった。
だけど、今。
それは、彼女の中にある。
近づかせてよ。
触れさせてよ。
好きだと感じた、その時からさ。
こんなに、想いは違うのか。
触れる体は熱いのか。
吐息を感じて。
肌を感じて。
君を感じて。
強く抱きしめさせて…
確かなものなんてなくて。
想いはいつもあやふやで。
疑問符が尽きる事はない。
なぁ、一緒にいよう?
「恋」ってものが、焦がれて求めるものであるなら。
「愛」ってやつは、与え合い安らぐものなのかな…。
どちらか一方ではなくて。
共に存在するもので。
だから「恋愛」、二つの言葉。
君に対して感じてるんだ…。
彼女のトマドイ。
俺の疑問符。
留まることはないけれど。
一緒にいたい、それだけは。
揺るがないものになるだろう。
好きだと感じて。
愛しいと思って。
愛していると囁いた……。
触れ合う身体。
同じようで、違う身体。
男と女。
消えないトマドイ。
――――全てなくていい。
ただ、二人身体をかさねて。
おもう想いだけが「真実」。
ホシイモノ トナカイ @tonakai_03
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