第6話 現実と幻実
突然僕の前に現れたワルンというその存在は、僕に衝撃の事実を伝えた。
「現実世界に戻りたい?ふふふ…。」というワルン。
「え、あ、の…何か知ってるんですか…?」
思わず僕は敬語になった。
「色々知ってるよ。でも今は教えない。大事なことだけ伝えに来たんだ。」
そう話すワルン。
「君はこのゲームをクリアしない限り、一生元の世界には帰れない。」
ワルンはそう言った。
「クリア…?クリアしなかったら…ずっとこのまま…?」
…正直、悪くないと思った。
現実世界よりも、こっちの世界の方が、少なくとも生きている感じがしたからだ。
「それも悪くないと思ってる?」というワルン。
図星だった。
「まぁ僕にとってはどっちでもいいんだよ。君がこの世界を選ぶのか、元の世界に帰ることを選ぶのか。どの道君がクリアできるとも限らないしね。あと、別に君だけじゃないし。」
「ちなみにクリアしなかったら、君に待つのは死だ。」
「正確に言うと、この世界ごと滅ぶ。安全なところなんかそのうち無くなる。」
ワルンは訳がわからないといった顔の僕をよそに、話を続ける。
「クローズドゲームはそういうゲームなんだ。一定期間が過ぎれば、魔王が侵略を開始して、世界は滅ぶ。そしてまた新しい世界が生まれて振り出しに戻る。他のプレイヤーはまたキャラクターを作り始めるけど、生身の君はどうなるかな?」
そう話すワルン。
「この世界ごと死ぬってことか…。」
僕はやっと事態を理解した。
「で、でもなんで俺がこんなことしなきゃいけないんだ?!」
今まで猫を被って僕と言っていたのに、素が出てしまった。
「うーん、そうだなぁ。それはまだ話せないかな。まぁ、せいぜいクリアできるよう、がんばるんだね。」
そう言うと、ワルンは目の前から消えた。
魔物にやられても死ぬし、
食べなかったら死ぬし、
クリアしなかったら死ぬし、
生きる方がよっぽど難しそうだった。
というか何を持ってクリアなのかがよくわからなかった。
また、いつまでクリアしなきゃいけないのかもわからなかった。
あいつ、肝心なことは言わないんだな。
だけど、話に出ていた『魔王』という存在。
とりあえず、この魔王を倒すっていうのがクリア方法なんだろうと思うのだが…?
ちょっと、レイファンに聞いてみよう。
「あの…このゲームのクリアってどうすればいいんですか?」
とその場で話してみる。
…レイファンからの返事はない。
ウインドウを開こうと思っても開けない。
そもそも、僕がワルンと話している間、レイファンはずっと沈黙を保っていた。
いや、ここには最初からいないようだった。
宿屋の部屋に案内されてから、僕は独りだ。
…まさか。
そう思い、部屋のベッドに横になってみる。
僕は睡魔に襲われ、すぐに寝付いた。
目が覚めた僕は、体力が全回復して宿屋の主人の前に立っていた。
「よく眠れましたか?それではいってらっしゃい」と話す宿屋の主人。
隣にはレイファンもいた。
「よし、回復もしましたし、レベル上げ行きましょうか。」というレイファン。
「えーっと、今まで何してました…?」という僕に、
「え?宿屋で回復しただけですよ?」というレイファン。
「コウさんも、すぐ出てきてましたよね?」というレイファンの言葉に、僕は察した。
どうやら、あのワルンとの時間は、このゲームの時間にカウントされていないらしい。
だから異常に静かだったのだろう。
僕以外は時が止まっていたのだ、恐らく。
僕は変な奴だと思われないため、慌てて訂正した。
「あ、そうですよね。じゃ、とりあえずレベル上げ行きましょうか!」
生き抜くためにも、僕は強くならなくてはいけないようだった。
一方、その頃…。
森の中を走っている、一人の男。
その男の名はヒカル。
「はぁ…はぁ…、なんなんだよ、ここは…!!」
ヒカルは魔物に追いかけられているようだ。
杖を持った女性を見つけたヒカルは
「す、すみません、助けてください!」と声をかける。
強力な魔法を放ち、その女性はヒカルを追いかけていた魔物を倒した。
「大丈夫ですか?」というその女性。
「あ、ありがとうございます…。どっか安全な所に連れてってもらえませんか…?」というヒカル。
「初心者の方ですか?良いですよ、一緒に行きましょう。」
そう話すその女性。
ヒカルがその女性の頭の上をみると、そこにはミウLv12と書かれていた。
「よろしくお願いします、ミウさん。」
次話へ続く…
クローズドゲーム @kuma10281028
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