第5話 アルート村と宿屋
ディンが死んだ。
いや正確にいえば、
ディンというキャラクターが削除された、
と言った方が正しいだろう。
ディンを操っていた人には実害はなく、キャラクターを作り直してまた始めればいいのだ。
しかし、僕の目の前で人が死んだことに変わりはない。
僕はショックだった。
「そんな…。」
僕が呟くと、レイファンが言った。
「私のせいで…。本当にごめんなさい。」
レイファンは魔法使いタイプのキャラクターで、レベルは先程の戦いで8になったようだった。
先程の戦いでは、僕らとレイファンはパーティを組んでいなかったが、共闘ボーナスというのが働いていたらしい。
お互いに経験値が入っていた。
「二人でパーティを組んで村を目指しませんか?」
すぐにレイファンからパーティ申請が来た。
僕はパーティを承認しつつも、
「ディンが新しいキャラクターを作って戻ってくるかもしれないから、ここで待ちませんか?」
と言った。
しかし、
どうやらこのゲームは一度キャラクターが削除されるとしばらくゲームができなくなるらしかった。
「それにここで待っていたらまた魔物に襲われるかもしれません…。お気持ちはわかりますが…というか私のせいですよね、本当にごめんなさい」
レイファンは何度も僕に頭を下げた。
謝られると、僕も申し訳ない気持ちになった。
ディンは僕と一緒にいたから死んだのだ。
「僕のせいでもありますから…」
しかし、もう考えても仕方ないのは確かだ。
僕らは村を目指すことにした。
レイファンとパーティを組んだ僕。
「じゃあ改めて、よろしくお願いします」
と丁寧にチャットしてくれるレイファン。
なかなか常識のある人のようだ。
もうほとんど村の近くにきていた僕らは、
すぐに村に到着した。
こうして、最初の村である『アルート村』に到着した僕ら。
ここは、田んぼがあり、牛や豚のような家畜もいて、少々のんびりとした村のようだ。
「ようやく着いたー!」
嬉しそうなレイファン。
「とりあえずご飯でも食べましょう!」
というレイファンに連れられ、飯屋に入った。
ゴブリンメイジを倒したことで、お金もある程度持っていた。
空腹を満たした僕。
なかなか美味しかった。
…そう、実はちゃんと味がするんだ。
グー…っていう効果音が鳴っている時、僕は確かに腹が減っていた。
思わず一句。
【夢なのに、えらくリアルだ、この世界】
…ご飯ってこんなに美味しいんだなって思った。
パソコンカタカタしてた時はわからなかったことだった。
食べ終わり、僕はレイファンと今後のことを話した。
「とりあえず私は転職したくて…」というレイファン。
このゲームは、職業システムがあるようだった。
ステータスの伸びや、スキルの習得はランダムのこの世界。
しかし、職業によってある程度方向性を定めることができるようだった。
また、キャラクターによって向き不向きがあるらしく、それは神官が判断してくれるようだった。
自分にあった職業を極めることが、この世界を生き抜く一つのコツらしい。
そういえば、ディンは『騎士』という職業が頭の上に表示されていたな。
僕にも天職があるのだろうか…?
「転職するためには、Lv10以上じゃないとダメなんです。だから、一緒にレベル上げしませんか?」というレイファン。
転職に興味が湧いた僕は、その申し出を了承した。
「じゃあまずは宿屋に回復しに行きましょう!」というレイファンについていく僕。
そういえば、宿屋で寝たら僕はどうなるんだろうか…?
思えば初めての宿屋だ。
「いらっしゃいませ!一泊10Gです!」
宿屋の主人が言っている。
『泊まりますか?』
『はい』を選ぶ僕。
すると、宿屋の部屋に案内された。
そこにはフカフカのベッドがある。
『どうぞこちらでお休みください。』
そうして部屋の扉が閉まった。
どうやら一人一部屋のようでレイファンは別の部屋に案内されていた。
部屋にポツンと立っている僕。
この後どうすればいいかわからなかった。
「どうしたらいいんだろ…」とつぶやくも、レイファンからの返信はない。
というか、チャットになっているのかもよくわからなかった。
静寂が辺りを包んでいる。
目の前にはベッドがある、ここに寝ればいいのか…?
その時、声が聞こえた。
「そうそう、そこに寝ればいいんだよ」
というその声。
驚いてその声の方を見ると、目の前には可愛らしいフォルムの、魔物なのかなんなのかよくわからないキャラクターがいた。
「だ、誰?!」
僕がそう言うと「ふふ、僕の名前はワルン。」とその存在、ワルンは言った。
そして、ワルンは衝撃の言葉を口にする。
「ねぇ、君、いきなりこの世界に来てびっくりしたんじゃない?」
「現実世界に帰りたい?」
「まぁ今はここが君にとっての現実なんだけどさ。ふふふ…」
次の話へ続く…
現在のパーティメンバー
レイファンLv8
コウLv7
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