幕間 アホズミへ

 安東先輩から、メールのひな形が届いた。


From: 安東(andohnats@maruyama.co.jpnic)

To:アホズミ(j-hozumi@maruyama.co.jpnic)

Subject: 質問者への返信テンプレ


穂純くん

安東です、お疲れ様です。


取り急ぎ、テンプレを送付します。

XXXXの部分や言い回しを適宜修正して使ってください。


送信前に「必ず」目視確認すること。(特に、XXXXの部分、宛先)


こないだ異世界に投げた小説(第1期末)、そろそろ現世に戻ってきそうなので、また地下に顔出します。


以上、宜しくお願いします。

安東


-- 以下、テンプレ --


【お問い合わせにつきまして】 

 お問い合わせ番号 XXXXXXXXXXXXXXXX


 XXXX  様


 マルヤマ書店編集部です。

 平素より大変お世話になり、有難うございます。


 この度は、弊社『第XX回マルヤマ大賞』にご応募頂き有難うございました。


 誠に申し訳ございません。

 弊社サイトの応募要項( http://maruyamahogehoge.jp/hogehoge/novel_apply.html )に記載されてろ、選考に関するお問い合わせには、お答えできません。

 先日お送りいたした、ご応募確認メールを、併せてご参照ください。


 この度は、ご応募とご連絡を、誠に有難うございました。


 マルヤマ書店編集部


-- 以上、テンプレ --


追伸 飲みのメンツは何人ぐらいになりそうですか? 早めにもらえると助かります。


安東





(安東先輩、あざす)

 もらったテンプレ文を貼り付けて、少し手直しすれば出来上がりだ。こんなのに時間をかけてる暇などない。


 来た質問メールは「届いていますか?」だった。


「よくいるんだよなあ」

 

 自作に自信満々な勘違いが、『なんで俺のが受賞してないんだよ』と憤った挙句、「作品、もしかして届いてないんじゃないですか?」って質問してくるのが。


(こういう小細工、ムダだっての。こっちが選ぶんだから)


 とはいえ、作り続けている奴、特に若いのは、急に鬼化けする事もあるから、この段階で邪険に扱っちゃまずい。


(ぎゃーぎゃーわめくのは読者獲得してからにしろよ)


 端末で、投稿作品データベース を、もう一度確認する。


 ちゃんと「受領日」にも日付が入ってるし、ステータスも「一次落ち」「異世界転送済(タイ変)」になっている。


(異世界で、化けて帰ってくるかな? そう簡単でもねえが。ははっ)


 作品を異世界に送って、異世界でブラッシュアップしたからといって、必ずしも「売れ筋」の作品まで育つとは限らない。


(リーダビリティだとか描写だとか、お前らが考えている間に、こっちは、想像もできねえとこまで領域まで来てんだよ)


 親切心を出すと、邪神に襲われる。

 だから、俺が出せる親切心は、端末前で軽く拝むだけ。


(いあいあ この作品の、異世界での躍進)

(いあいあ Calcさんの大願成就。ははっ)


 俺は淡々と、残りの修正チェックをこなして、回答メールを送信した。

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