第7話 最終話 ベルトコンベア

セーターが話さなくなってから数日後、倉庫のにおいがひどいとの訴えがあったらしく、ボランティアが原因を調べに来た。


原因はセーターの濡れたウールが腐った匂いだった。

リネンには嗅覚がないのでわからないが、彼自身にも匂いが移っていたらしく、セーターとリネンのいる段ボールごと廃棄されることが決まった。

可燃ごみとして焼却されるらしい。


リネンの入った段ボールは、トラックで焼却場に運ばれた。トラックから降ろされると、ひとまず集積場に運ばれる。

集積場のごみは、焼却場の職員によって順番にベルトコンベアに乗せられる。ベルトコンベアによって焼却炉のごみ投入口へ運ばれるのだ。


ベルトコンベアへ乗せられる順番待ちの間、リネンはタカヒロの押し入れで出会ったTシャツの話を思い出していた。


「僕たちはいつか焼却されて、水と二酸化炭素になるんだ。

その水と二酸化炭素で育った植物から繊維が取り出され、布が織られ、僕たちはまた新しい服に生まれ変わることができる。」


あの話が本当かどうか、もうすぐ分かる。隣にいるセーターの屍を見た。

「セーター、あんたも一緒だ。約束、実行できなくてごめん。」


煙になったら話はできないだろうが、意識はあるのだろうか。

次の服生でも、またタカヒロのような持ち主に会えるだろうか。


そんなことを考えているうちに、順番がやってきた。

リネンは段ボールごと職員によってベルトコンベアに乗せられると、高温の炉へ向かって運ばれていった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

リネン 和代内也 @namtab

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る