あゝ陰楽器を踏む

@rskrou

第1話 あゝ陰楽器を踏む

 日が沈むと寒くなることを予想して上着を持ち出すと、後悔し帰路につく。

 そんな春。


 僕は先月で高校を卒業して丸二年となった。

 飽き性の僕は入学してからというもの、三年間の高校生活を捧げたといっても過言ではない運動部での知識、技術をそっくりそのまま捨て、軽音サークルに所属した。というかさせられていた。


 隣で嫌煙家の一切を煙に巻こうと好物のラッキーストライクをふかしているのが、悲劇の引率人須賀すがだ|この人物、マズローの欲求階層を真っ向から否定しにかかるような人間で、自らが興味を持ったことは誰にも言わずに初めて、勝手に暴走している。


 隣の人間?の紹介はこれで事足りる。

 それが二年間付き合ってみて感じることだ。


と、新入生になにを吹き込もうか想像していたところで、強く風が吹いた。手にしたサークルの新入生勧誘ビラをぐっと握りしめた僕は、今日もサークルの新たな希望に早く面倒事を片付けてもらうべく、一回り違う後輩に頭を下げるのだ。

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