5月8日

 昼休みに喫煙所でタバコを吸いながら、それはもう実の無い会話を古賀くんとしていました。


「ネコを飼おうかと思ってさー」

「ホント脈絡ないな」

「うん、今思ったから」

「へぇー」

「……興味ない?」

「ん? ない」



「……ネコか――」



「藤谷さん!?」

「いつの間に?!」



 と、いつのまにか背後に立っていた藤谷さんに超ビビりました。

 藤谷さん神出鬼没過ぎです。

 いつからいたのか聞いてみようかと思いましたが、怖そうなのでやめました。


「加納、ネコ飼うのか?」

「はあ、まあ今度のボーナスで飼ってみようかなーって」

「やめておけ……」

「え、なんでスか?」


「ネコはなあ――」

「はあ」

「……ミドリガメを噛み千切る」

「……はあ」

(何故ミドリガメ?) ←古賀君


「だからやめておけ」

「いやでも藤谷さん、俺カメとか飼ってないし――」

「いいんだよ」

「は、はあ……じゃあ飼うとしたら何がいいスカね?」

「……ネコ以外ならなんでもいい」

「それなら名前付けてくださいよ」

「俺にそんな趣味はねえ! 自分でつけろ!」

「す、すいません」

「じゃあな」


 そう言って藤谷さんは喫煙所から出ていきました。



「……こえーなああの人」

「そうか? 俺は段々面白い人に見えてきたぞ?」



 それでその場はそれで収まり。

 定時後、俺は古賀くんがあがった後も一人残業を続けていたのです。


「加納――」

「あ、藤谷さん」

「……『力道山』とかどうだ?」

「……は?」

「力道山とかどうだ?」

「もしかしてネコの名前ですか?」

「そうだ」

「ずっと考えてたんスか?」

「…………」

「藤谷さんプロレス好きなんですか?」

「………普通だ」

「そっすか」




 やっぱり面白い人なのかもしれない。

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ハラキリ南半球(抜粋) ヅラじゃありません @silverbullet

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