第2話
「はじめまして、ご主人様。デスゲームにようこそ!私は選ばれしプレイヤー限定でプレゼントされる可愛くて無邪気で清純で可愛い小悪魔のココアです!」
「なるほど、『選ばれしプレイヤー』ねぇ。君はもう、僕が運営側のプレイヤーであることは知ってるよね?」
「はい。もちろんです。ご主人様に対する初期サポートは私が担当いたします。早速ですが、私の裁量範囲内でご主人様の分の初期ランダムアイテムは良いものを揃えました。つまらない小競り合いで死なれると困りますからね。いいですか?ご主人様の使命は派手に活動してゲームを面白くすることです。必要なものがあるなら私に言っていただければ大抵のものは揃いますが、安全な場所に引きこもってばかりいるのは許されません。そういう盛り上がらない行動は何も知らない一般プレイヤーだけが許される贅沢です」
「うん。分かってるよ。念のために確認するけど、正規のゲームマスターは僕の他に存在するよね?」
「はい。一般公募で選ばれたご主人様のような盛り上げ役の他に、ゲーム内にはゲームの円滑な進行を担う組織内公募のゲームマスターが潜伏しています。ご主人様のゲームマスター優先度は第4位ですので、ゲームマスターとサブマスターとレーダーが死んだ場合はご主人様にゲームマスター役が回ってくる可能性はありますが、第4位にまでゲームマスターが回った先例はありません」
「なるほど、安心したよ。僕は楽しく暴れたいけど、ゲームマスター役みたいな面倒事を押し付けられるのは嫌だからね。ところで、ココアは僕がどうしてデスゲームに参加することになったか、その辺の事情は知ってるかい?」
「いえ。私のようなサポーターに与えられるのは必要最低限の情報だけです。それ以上深いことは直接聞く規則になっています。運営側のプレイヤーとして参加してくれる奇特なプレイヤーの皆さんは貴重ですから、事前に情報収集して機嫌を損ねる事態は避けたいのです」
「そうか。ゲームが始まるまでもう少し時間があるし、簡単に事情を説明しようか。実は、僕の両親がヤミ金で金を借りて、僕を置いて夜逃げしてさ。マフィアが借金は肩代わりしてくれたけど、その代償として今僕はここにいるのさ」
「よくある話ですね。ありふれすぎていて信じられません。そのカバーストーリーは不自然だから書き直した方がいいと思いますよ?」
「僕はただの善良な一般市民だよ?いつだって他人の幸せを祈ってるし、世界平和を願ってるし、困ってる人を見かけたら助けるようにしている。僕は世界一善良な人間だと言っても過言ではないと思うね」
「ご主人様、このデスゲームの参加者数は知ってますか?」
「うん。1万人でしょ?大規模だよね」
「でも、1万人はちょっと多過ぎますよね?だから、最初は派手にイベントを起こして99%ほど殺してからデスゲームが始まります。死体の山を築けば誰だって事態の深刻さを悟って積極的に殺し合うようになります。言葉よりも死体の山の方が効果的に真実を伝えてくれます」
「へぇ。いきなり派手に殺すんだね。僕は多分死なないから興味ないけど」
「せっかくなので、今回はご主人様に99%を殺してもらいましょう!こちらが首輪の爆破スイッチです。このボタンを押せば99%の首輪が爆破されます。ボタン1つ押すだけでライバルが一気に減りますよ」
「一応聞くけど、僕の首輪は爆発しないよね?」
「はい。パートナー付きプレイヤーの首輪は爆破されないよう調整されていますから」
「後は、そうだね。僕好みの美少女の首輪は爆破されないように調整しておいてくれ。僕にだって、少しくらい役得があってもいいだろう?はい、この印を付けた女の子は殺さないように」
「おかしいですね。参加者のリストはご主人様のような一般公募プレイヤーには開示されないはずなのですが。今回から規則が変わったのでしょうか?」
「僕が担当者に会ったときに、缶コーヒーを奢ってから『ゲームの中で可愛い女の子を口説きたいから評判の良い女の子教えて』と聞いたらリスト渡してくれたよ」
「ああ、そういうことですか。あの人は悪い人ではありませんけど仕事が適当だから嫌いですっ」
僕は爆破スイッチを押した。
「これでいいの?」
「はい。これにて第一選考は終了ですね。それにしても、少しくらいは迷うフリくらいはしないと運営側のプレイヤーだと気付かれて面倒なことになるから注意した方がいいですよ」
「そう?困ったなぁ。僕は嘘を言うのが苦手なんだ。いつだって真実しか語れない。ああ、僕も嘘を言えるようになったらいいのになぁ」
「ご主人様、一つお聞きしてもよろしいですか?ご主人様が爆破スイッチを押したことによって大勢人が死にましたが、そのことについてはどう思ってますか?」
「特に何も。他人が生きているか死んでいるかなんてどうでもいいことには興味ないよ」
【デスゲーム】フィクサー @neverendingstoty
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。【デスゲーム】フィクサーの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます