05、戦いの後もやっぱり不幸?

 

 チークは目の前にいる他の悪魔と容姿は同じなのに他より少し悪魔に手こずっていた。火の耐性を持っている上位悪魔アークデーモンである。


「おいおいおい!嬢ちゃん!さっきまでの勢いはどうしたよ!」


 ついさっきまでチークは下位悪魔を蹂躙していた。かなり数が減り、もう指で数えられる数しか悪魔はいなかった。その残りもマイクによって殲滅されつつあったのだがチークの目の前にいる悪魔は下位悪魔に通用していた火の上級魔法が効かなかった。


「あなたは周りより少し強いようね。でもあそこにいる魔王よりは大分劣っている。まぁ、ザコね。」


 チークは上位悪魔を罵った。途端に上位悪魔は怒り狂いチークに襲いかかった。


「うっせぇよ!強がってんじゃねえ!このカスが!」

「頭の中までザコようね… まるで小学生みたい。」


 そしてこの間まで小学生だったチークは火の魔法を放つ。先ほどまで下位悪魔相手に無双していた火の上級魔法ではなく火の特級魔法だ。


極炎プロミネンス炎滅ディザスター!」


 太陽を縮小したような球体が悪魔の前に現れる。周りは熱気で陽炎が生まれている。その球体の特異性を感じたのか先ほどまで対峙していた上位悪魔は天空に凄まじい速さで逃げ出した。火に耐性を持っているのにも関わらずである。


「特級魔法なんて反則だ!アダン様すまねぇが俺はまだ死にたくない!帰らせてもらうぜ!」


 チークはそれを見て炎の球体にさらに魔法をかける。

「逃がすわけないでしょ。追跡ホーミング!」


 炎の球体は上位悪魔にまっすぐ飛んで行き悪魔を球体の中心へと飲み込んだ。


「あt.....」


「熱い」という一言も言わせぬうちに悪魔は消滅した。その様子も見ずにチークは残りの悪魔を殲滅していったのであった。少しでもロイツに褒めてもらいたい、その一心で...


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 ロイツは右腕を失った魔王ダークネスと戦闘していた。右腕がないにも関わらず出鱈目な強さだった。なんなら力が増していると言っても過言ではなかった。


「お、い、なん、で、力が強、くなって、るんだ!」


 ロイツは魔王の攻撃を避けながら質問をした。


「・・・・・」

『シュッ!シュッ!』アダンが拳を振るう音だけが戦場に響く。アダンは怒り狂い我を失っているので質問には答えなかった。


「ちっ、無視かよ。」


 いつの間にか周りには悪魔がいなくなっていてチークとマイクがこちらの様子を見ていた。あまりのレベルの高さに目で追えてないようだが...

 それもそうだろう。俺はスキル:超強化で魔王と戦っている。時間制限があるのだが大幅にステータスが上昇しているのだ。


「おい!ロイツ!そろそろ終わりにしろ!」

 マイクには魔王は見えていない。自分に見えていないものが親友であるロイツとチークには見えている。そんな劣等感を押し殺しマイクはロイツに呼びかけたのだった。


 俺は魔王について何か知りたかったから攻撃を避け続けていたのだが質問にアダンは何も答えない。これ以上は避け続けても無駄だったのでマイクの言葉に基づいて反撃することにした。


「アダン。俺はもうお前には興味が無くなった。今から本気でやってやる。」


「・・・・」

 やはりアダン何の反応もしなかった。そして何故かまた力が上がっていたのだった。

 ロイツは創造によってアダンの足に足枷のような結界作り出した。アダンは足が絡まりその場によろける。

 一瞬、隙が生まれた。それをのがさないようロイツはスキルを発動させる。炎神である。スキル:炎神には火系統の魔法を操る他に別の効果があった。その名も『炎神カグツチ』スキル名と同じ技名。特級魔法も霞むほどの威力の技であった。威力が高すぎる故に制限があり1日に1度しか発動できない。それもあって今まで1度も試した事がなかったのだが特級魔法では決定打にならないと判断し炎神カグツチを発動させたのだ。


 ロイツは呟く

炎神カグツチ

 すると手のひらに一つの火が出現する。しかし操作の仕方はよくわからなかったのでとりあえずアダンに触れさせた。

 その瞬間、一瞬にして爆炎が周囲に広がる。村もそれに巻き込まれていた。



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 キーンは走る。あと少しで村につく。そんな時、


『ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』

 そんな音とともに周囲が火に囲まれていた。キーンは村は消滅したと考えた。しかし彼は気付いた。炎の中にいるのにも関わらず全く熱いと思わないし、周りの植物も燃えていないことに。彼はこの現象に心当たりがあった。自信のスキル:雷神にも同じ効果があったのだ。彼は少し考えたが村に異変が起きているのに違いないと思い再び村へ急いだのだった。




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「おいっ!ロイツ!お前何してやがる!村に、村に火がうつって...ない...?」

「あ...あ...」

 マイクとチークは混乱していた。それはロイツも同じである。村も大騒ぎであったがなんの異常もなさそうだった。しかし痛々しい叫び声は聞こえていた。


「グガァァァァアァァアァァァッ!」


 アダンである。彼だけが燃えている。ロイツは冷静になり考えた。『炎神カグツチ』について。そうするとある考えにたどり着いた。


「この技は自分が敵と見なしたものにのみ適応されるのか…?」

「そ、そんなことができるのか… スキルってのはすげえな...」

「わ、私のスキルの水神もそれなのかもしれないってことかな?」


 チークも実はスキル持ちなのである。しかも2つ持ちだ。スキル名は水神、変身だ。水神は火神の水版だが水系統の魔法はそう威力がないので普段は普通に魔法を使うのだ。変身はそのままである。何かに身を変えることが出来る。悪魔や人、さらには生のない物にも化けることが出来る。


「チークの水神はいったいどうなるんだろうな」

 マイクが呟く。俺もそれを思っていた。

 そんなことを言っている間にもアダンの叫びは終わらなかった。正直うるさい。だがマイクにはただ燃えている物体が視認出来るだけで声は聞こえてはいなかった。とてもつまらなさそうにその燃える物体を腕を組んで見ていたのであった。

 

叫び声が収まった。しかし、まだアダンの身体には火が燃え盛り消滅はしていなかった。そんな彼は苦しそうに喋りかけて来た。


「ゔぉい、ロイツとやら、お前は一体なんなんだ、何者なんだ...

 安心しろ俺はもう直消滅してしまう。だから最後に質問させてくれ。」


「俺はロイツ=シングラーデだ。それ以上でもそれ以下でもない。ただのロイツ=シングラーデだ。」

 俺は答えた。そう俺は転生者だが今は平民の一人息子だ。まぁ世界を救う予定なんですけどね。


「そうか... なら別にいい。」


 反応の薄さに少しイラッとしたが我慢した。


「ところでお前は戦闘中に俺の力が増している事に疑問を持っていたな。それは俺の能力だ。俺は怒りが増すほどに理性と引き換えに力を手に入れることが出来る。なんとも欠陥品な能力だ。」


 アダンは戦闘中に質問したことについて答えた。いくつかの俺の頭には疑問が浮かぶ。


「その能力は天使がもたらすスキルと一緒なのか?それと、その能力は全員が持っているのか?」


 俺は質問を二つに絞り質問した。


「天使みたいなやろうと一緒にするんじゃねぇよ。これは俺ら悪魔だけに発現する能力だ。能力は魔王になってやっと発現する。だから全員持っているわけじゃない。」


「ってことは、能力持ちはだいぶ少ないわけだ...」

 そう呟いた瞬間俺の頭の中にゲームのような音が響いた。『テッテレー』

 そんな音が聞こえた。そして勝手にステータスが開かれた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ロイツ=シングラーデ 12歳

 Lv.2(new!!)


 スキル:炎神 創造神 超強化

 魔法:特級・・・水、土、風、光、闇、空間、物理

 上級・・・火

 下級・・・時間(new!!)

 


 HP:1400→3800

 MP:8000→14000

 力:1200→3400

 素早さ:1200→1700

 知力:1200


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 何故かステータスが更新されていた。大幅に。それに前までなかったレベル表示あり、魔法にも時魔法が追加されていた。俺はこのことについて不機嫌そうなマイクに聞いてみた。


「マイク、ステータスが更新されたんだがレベル表示があるんだ。お前にもあるか?」


「レベル?なんだそれ?俺は特にステータスは変わってねぇぞ?」

 マイクは不思議そうに逆に尋ねられた。

 チークにも聞いておく。


「チークは?」


「私もレベル?というものはわからないわ。それにステータスも少し更新されたぐらいかな?」

 チークもよく分からなかったらしい。そんな時、アダンが驚愕に目を見開いて俺に聞いた。


「お前...レベルがあるのか?!それは魔王にしかないはずだぞ!」


「「え?」」

 俺とチークは同じ反応をした。マイクにはアダンの声が聞こえていないので何を言っているのかは分からなかった。アダンは話を続ける。


「レベルというの先ほどの能力と同様、魔王になってステータスに表示されるようになる。レベルがあがればステータスは大幅に上昇するんだ。俺もLv.2になった時は驚いた。ステータスの値が倍近く上がったんでな。いや、それはどうでもいい。しかし俺は人間にレベルが表示されるなど聞いたことがない!」


 俺達はその話信じ込んでいた。あまりに熱心に話していたからだ。

 少しの沈黙をチークがやぶる。


「ロイツって魔王なの?」


 当然の疑問だった。俺もその考えはよぎったが俺は神に世界を救ってこいと言われたので流石に破壊する側ではないとさすがに思った。


「それはないと思うぞ。少女よ。コイツは誰がどう見ても人間だ、魔王である俺が保証してやる。コイツはどこか特殊だからな。レベルが表示されるようになったのも頷ける。」

 アダンがそう言うと俺とチークは安心した。


 そんなことよりずっと気になっていることがあるのだ。それはチークもマイクも一緒だった。


(((一体いつ消滅するんだ?)))


 俺達の心の声を聞いたかのようにアダンは言った。


「この炎、お前が俺に消滅しろと思わない限りずっとこのままらしいな。」


((なんてむごい技なんだ!))


 俺とチークはそう思った。村を覆っていた炎もいつの間にか消え、アダンだけが燃え続けていた。


「そろそろ俺はこの痛みに飽きてきた。消滅させてくれ。」

 魔王であるアダンにそんなことを言わせるほどその炎はアダンに痛みを与えていた。


 俺はそんなアダンを見て最後に一つ聞いた。


「なぁ、どうしてこの村を襲ったんだ?」


 アダンは早く消滅したがっていたのでさっさと答えた。

「それはだな、この世界を崩壊させるための第一拠点をこの村にするようにベリアル様に命令されたからだ。」


「ベリアル?それはなんだ?お前は魔王だろ、まだ上に何かいるのか?」


 アダンはその問にも答えた。そうでないと消滅できないのだから。


「ああ。俺達の王だ。大魔王ベリアル様、俺達魔王なんてカスも同然だ。」


 アダンはにこやかに答えたがその言葉を最後に意識を失った。あまりにも大魔王の情報が少なかったのだがそこで初めて大魔王の存在を知り俺達3人の顔には緊張が表れるのであった。


 意識を失ったアダンの身体はまだ燃えていた。それを見て俺はやっと消滅を許した。すると同時にアダンは灰と化すのであった。


そして村を覆う結界を解いた。


「「「「「 うぉぉぉぉぉ! 」」」」」

「俺達の救世主に感謝をーーーー!」

「救世主様ーー!」

そんな声が聞こえてくる。村は大歓声に包まれたのであった。ロイツその声援を嬉しく思っていた。

そう。この戦闘の最中にマイクの内に黒い感情が芽生え増幅していたことにも気づかずに...

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不幸なんですけどなんとかなりますか? フスマ @fusuma0124

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