04、戦闘中でもやっぱり不幸?
「お、おい!誰かが悪魔と戦ってるぞ!」
「ほんとだわ!けど、あの子達まだ子供じゃない!?」
「あんな子供達が戦うなんて...!兵士達はいったい何してるんだ!」
村の様子が落ち着いて来た頃そんな声が聞こえて来た。
悪魔と戦っているのは俺、チーク、マイクの3人である。
俺達は上空で戦っている。浮遊魔法を使っているのだ。浮遊魔法は村の兵士が使えるような魔法ではないのだ。だから兵士は地面に降り立った悪魔と戦うしかないのだ。ロイツの父、モイもその1人であった。
(俺のせいで父さん達に批判が...)
なんだか少し罪悪感がある。けれど、そんな場合ではない。俺はまさに今魔王と戦っているの最中なのだ。
「戦闘中に考え事とは随分と余裕だな。」
魔王アダンは挑発気味にそう囁いた。
「ああ。お前をどう殺すか考えていたいたところだよ。」
適当に返事をしておいた。避けるのをやめて俺も攻撃姿勢に入った。
右手を前にかざす。
「
そう言って俺はアダンを球体の結界に閉じ込めた。そしてすかさず結界の中を創造によって水素と酸素で満たした。
そしてもう一つのスキルである炎神によって結界の中に火を発生させた。
結界内で大爆発が起きる。しかし、音は聞こえない。結界にはいつものくせで防音も付与していたのだ。
「どうだ、やったか?」
フラグを立てたことに俺は気づかない。結構な自信があったからだ。
『バリバリバリ』
そんな音をたてて結界は先ほどのように破かれた。そこから出て来たのは先ほどまで余裕を持っていたアダンとは別だった。
彼からはおぞましい気配を感じ取ることができ、まさにこれがブラックホールだ!というぐらいのドス黒いオーラが放たれていた。
ヒュンッ!
そんな音が聞こえた。アダンの姿は俺の前から無くなっていた。俺はすぐさまスキル:超強化を発動させる。超強化とは自分のすべてのステータスをを大幅にあげるものである。そうしたことによってアダンが急速に俺に迫っているのが見えた。慌ててそれを避ける。
「うっ!あっぶねぇ。」
今避けたにも関わらず再び迫って来るアダン。すかさず魔法を放つ。
「
風の特級魔法の一つである。凄まじい勢いの風がアダンの周りを囲み俺を捕らえようとしていた右腕が『ブチッ!』という音をたて風に飛ばされた。
「ぐぁっ!なんだこれ... 風なんかで俺の右腕をちぎりやがった... 許さん、絶対に消してやる...絶対に...」
アダンは混乱と同時に黒いオーラをさらに大きくさせたのであった。
ーーアダン視点ーー
俺の周りに凄まじい硬度の結界が展開された。
(くっ。なんなんだこいつは... いったい何者なんだ。)
俺の目の前にいる謎の存在。見た目は人間で10歳をようやく超えたあたりだろうか。そんな少年が魔王で俺と対等に渡り合っている。いくら天使の力を借りようとこんなガキが魔王である俺と対等なはずがない。
アダンは混乱していた。
そんな時結界内は酸素と水素で満たされたのだがアダンは気付かなかった。
次の瞬間、結界内で火が起こると同時に大爆発に見舞われた。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
彼、アダンはこれまでにないくらいの痛みを経験した。しかし身体の損傷はそれほどなかった。そんな外見とは別に彼の頭の中は怒りにまみれていた。そして叫んだ。
「お前は一体なんなんだ!人間のガキごときがこんな魔法使えるわけねえ!俺に死ぬ思いをさせたんだ、絶対に殺してやる!!!!」
しかし結界の外にいるロイツには聞こえない。防音だからだ。アダンは無視をされてこちらを見ていると思い込み余計に怒りを増幅させた。
ブチッ!
キレた。アダンは怒りに身を任せた。もう我慢などできなかった。
先ほど同様結界を『ビリビリッ』と引きちぎり目の前の少年に襲いかかった。
少年、ロイツはそれを避けた。アダンはすぐさま2度目の攻撃にはいる。
(取った!)
アダンはそう思った。
が、しかし、アダンの前に風が吹いた。彼は冷静ではなかった。風など、どうとでもないと思っていた。
『ブチッ』という鈍い音とともに相手を掴み取ろうとしていた右腕が風に持っていかれた。
「ぐぁっ!なんだこれ... 風なんかで俺の右腕をちぎりやがった... 許さん、絶対に消してやる...絶対に...」
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「旦那!旦那!起きてくだせぇ!」
焦りながら馬車の運転手は中にいる男、キーンに言った。
しかしキーンはそんなことなど気にせずまだ眠っていた。
「あんたが行こうとしている村に悪魔が大量発生したらしいのですぐにアルゲディンに戻りますぜ!」
運転手がそう言った次の瞬間、キーンは立ち上がった。
(しまった... 寝過ごしてしまった!急がねばっ!)
キーンはすぐさま馬車から飛び降りありえないと思えるほどのスピードで村へ走るのであった。彼はスキル:未来視を持っていて先のことを見ることが出来るが村が悪魔によって崩壊させられている未来など誰が見たいのだろうか。彼は間に合うことを祈りながら走り続けた。
そんな姿を運転手は口を開けて見送り、自分はさっさとアルゲディン王国に帰ったのであった。
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(なんで... なんで俺には見えてないんだ!くそっ!俺は魔王を倒すために鍛えてきたんだ!それなのになんでだ!どうして!)
そんなことを考えていたのはマイクである。マイクは気づいていたのだ。自分には魔王が見えなかったことを。ロイツが指を指していた相手が分からなかった。それに今、ロイツが何と戦っているのかさえ分からない。
マイクは自分のことが嫌になっていた。世界を救うことを夢見ていたのに現実は無惨だった。
そしてマイクは八つ当たりのように目の前の下位悪魔を次々と倒していくのであった。
「おやおや、あなた。なかなか黒い感情をお持ちですねぇ。」
「ほんと、八つ当たりで私たちの仲間を殺すなんて。私たちより悪質じゃないかしら。」
そんな2つの声が耳元で聞こえた。マイクはすぐさま距離を取った。
「なんだお前ら。何が八つ当たりなんだ?俺は村を、世界を救うためにお前らを殺しているだけだぜ?」
マイクは嫉妬していた。しかし唯一無二の親友達のことを考えると魔王が見えないなんてどうでもよくなった。
「ふふ。まだまだ子供ね。ゼラ、この子中々いいんじゃないかしら。」
「そうですねぇ。いい素質をお持ちのようですしね。」
マイクにはただ自分のことを褒めているように聞こえた。だが実際は違った。マイクの心の奥底にある黒い感情のことを言っていたのだ。
「名前があるということは上位悪魔か。いや、そんなの関係ねぇ。お前らもぶっ殺してやる!」
マイクはそう言うと『ゼラ』と呼ばれた悪魔に魔法を放つ準備を一瞬でした。下級水魔法によって作られた直径50cmほどの
『キュゥゥゥン!』
そんな水球はゼラに当たっても勢いを失うことなく彼方へ飛んでいった。
そんな水球に当たったゼラという悪魔はもちろん死に至っていた。しかし、何かがおかしかった。他の悪魔とは消滅の仕方が異なっていたのだ。下位悪魔なら灰となり粉々になるのだが、ゼラはいくつかの光の玉となって空へと消えていったのだ。
マイクはそれが上位悪魔の消滅の仕方だと思い込んだ。
「ほぉ。ゼラを一撃で仕留めましたか。お強いですねぇ。」
マイクはすぐさまもう一体の悪魔に先ほどの水球を放った。もう一体の上位悪魔も消滅した。
(上位悪魔でもこんなものか… ちっ。俺も魔王が見えていたら…)
そうマイクは思った。マイクの奥深くにある黒い感情が少し大きくなった。しかし、マイクはそれには気づかずに残りの悪魔を殲滅させて行ったのであった。
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大きな城がそこにはあった。周りは禍々しい程真っ黒で死んでしまった大地という感じである。そこに2つの光が舞い降りた。
「あら、ゾラ、あなたもやられてしまったの?」
「いえいえ、あの子は貴重ですからね。ここで殺してしまってはもったいないですからね。少し黒い感情を増幅させてあげたぐらいですよ。」
2人の悪魔が会話をしている。それは先ほどマイクが1発で仕留めた上位悪魔の2人、ゾラとゼラであった。まぁ実際には仕留められていなかったわけだが。
そんな2人は下位悪魔と同じ姿ではなく人型であり、とても外見は悪魔には見えなかった。
「それにしてもベリアル様の能力は相変わらずすごいですねぇ。消滅せずにここに帰って来れるとは。」
「そうねぇ、ベリアル様は欠陥品だと仰っているけれどすごすぎる能力よねぇ。」
ゾラとゼラの2人は会話をしながら城の中を歩き大きな扉の前で立ち止まっり、『コンコンッ』とノックをすると中から声が聞こえてきた。
「入れ。」
たった一言であったが2人は緊張でどうにかなりそうだった。
中に入ると王座には一つの影があり、さほど大きくない影は2人に声をかけた。
「ゾラとゼラか。お前達、もう帰ってきたのか。アダンはどうなった?収穫はあったのか?」
2人は低めの声にぞわりと背筋を震わせた。そしてゾラが事の終始を語った。
「ふむ。アダンは消滅する可能性があるか、まあいい 。あいつはただの駒だからな。それよりなんだ、お前達はアダンよりはまだ経験が浅いも一様魔王なんだ。それを一撃で
ゾラとザラは魔王であった。人間には知られていないが魔王は姿を変えることが可能なのだ。そして、ゾラとザラは頭を90°曲げてあまりの嬉しさに大きな声で言った。
「「ありがたき幸せ!
全く同じ言葉を放った2人ゾラとザラはその後部屋から出た。魔王を超える大魔王という存在を確かに感じながら。
それと同時にベリアルに話しかける者がいた。
「ベリアル様、いい素材を見つけなさったのは何よりなのですが…
アダンを押している少年は少し気になりますね…」
「あぁ、そうだな。おい、ラストよ、お前はアダンを倒すであろう少年を監視しろ。」
そう言うとどこからともなく人影が現れた。
「はっ!承知致しました。それでは早速行ってまいります。」
ラストという悪魔は10代ぐらいの少年に変化して扉をあけて出ていった。
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