第2話「出会い」

その日の夜、白馬荘ではめぐみの歓迎会が行われようとしていた。入寮している学生が集まるリビングルームには、「ようこそ!白馬荘へ!!」と言う垂れ幕が華やかに飾られていた。



「めぐみ〜ん、こっちこっち!さぁ、ここ座って」



そう言ってめぐみの手を引っ張りながらテーブルへ案内したのは、東宮学園三年生徒会長の若宮わかみやリズ。茶髪のショートヘアな彼女は運動神経抜群で明るく元気なムードメーカー的な存在である。



「あ、あの……若宮先輩?そんなに引っ張らないでください!!それと、めぐみんとか勝手にあだ名付けないでください!!」


「ごめんごめん、だってめぐみんが来てくれて私嬉しいんだもん!それに、私はめぐみんの方が呼びやすいの!!」



そう言ってめぐみを座らせたリズは、笑顔を見せながら彼女の横に座るとポケットからスマホを取り出すと何かメッセージを打ち込んで送った。すると、一人の身長の大きい眼鏡をかけた男子、飯田 曜介いいだ ようすけがリビングルームへ眠そうな顔をしてやってきた。



「リズさん、もうやるの?」


「当たり前じゃん!だって、数ある東宮学園学生寮の中からこの白馬荘に来てくれたんだよ!これはまさに、奇跡だよ!!」



そう言ってリズは、椅子から立ち上がると冷蔵庫へ行き中からケーキを取り出すとテーブルに並べた。しかし、めぐみの歓迎会は一向に始まらない。何故なら、メンバーが足りないのだ。



「あれ、龍くんは??」


「あいつ、まだ帰ってないみたいですね。」



時刻は、7時になろうとしていた。この物語の主人公、黒峰 龍生くろみね りゅうせいの姿が白馬荘にはなかったのだ。




























「やべぇ、遅刻だ!!」



そう言いながら自然島の港まで全力ダッシュしてるのが白馬荘最後の住人、黒峰 龍生なのだ。彼は今、奇形生命体の1人である奇形グモを撃退した所だが森林の奥だった為、道に迷い歓迎会遅刻しているのである。



「これは、リズさんに殺されるな……。仕方ない……命は捨てたくないから……自然島港前ッ!!!」



そう言うと龍生の身体は突如消えると、一瞬にして彼は、自然島の港までやって来た。これが、彼の一番得意な超能力・瞬間移動である。普段は、学校の校則や寮の規則により能力の使用を禁止されている為使えない。



「都島行きありますか?」


「あぁ、あるよ。次の船だよ!」


「次……ですか……。」



次の船まで数分待たなければならない事を知って龍生は、ガックリと肩を落とした。

結局、それに乗り都島へ着いた頃には7時半になっていたのを手元にあるスマホで確認した龍生はありえないくらいの通知を目撃した。その全てがリズからだった。通知を全て確認した龍生のスマホが急に振るえた。着信の相手はもちろんリズだった。



「もしもし……」


《あ、遅い!今までどこに何してたの???》


「あの……奇形生命体とバトってました……。」



小さな声で龍生は、リズの質問に答えた。すると、さっきまで起こってたリズはそれを聞いて彼女らしくない少し寂しそうな声を出してして彼に声をかけた。



「……早く帰ってきてね。」


「……分かった。」



そう答えた龍生は、電話を切って誰もいない公衆トイレの中へ向かうと辺りをもう一度確認してから精神を集中し始めた。



「白馬荘前ッ!!」



そう小さく呟いた龍生は、再び瞬間移動を使い白馬荘前まで移動してきた。目の前に建っている白馬荘をゆっくり見渡してから玄関のドアを開けた。



「た、ただいま……」


「あら、遅かったじゃない!さぁ、めぐみちゃんの歓迎会始めるわよ!今日は私が腕にノリをかけて作ったスペシャルフルコースよ!」



そう言ってエプロンを外しながら龍生に言ったのは、戸山 茜とやま あかね寮官先生だ。普段は、東宮学園の国語科の教師と龍生のクラスの担任だがこの白馬荘では、お母さんのようにみんなの面倒を見る素敵な先生だ。



「茜先生……ありがとう」


「でも、を使ったでしょ?だから、トイレや風呂それに台所の掃除宜しく!」



そう、茜先生は少しの規則を破ったらスグに罰則を与えるで有名なのだ。しかし、出来ないようなことはさせないのが茜先生のいい所でもある。



「さぁ、全員揃ったことだしめぐみんの歓迎会始めるよ!」



リズが元気良く発言するとみんなリビングルームに集合した。こうして、白馬荘へやって来た北川めぐみの歓迎会が盛大に行われた。





「白馬荘……」



みんなが寝付いた頃、一人リビングルームから外を眺めているめぐみの姿があった。ここに来るまで不安だけだった彼女の感情に新入生のようなワクワクと言った感情が新たに生まれていた。



「寝れねぇのか?」



そんな彼女に龍生は、優しく声をかけた。その表情は、歓迎会の時みたいに晴れてはなかった。



「そんな事ないよ!ただ、これから私どうなるのかなって考えてて……。」


「夏までだから……」



めぐみは、今の想いを打ち明けると龍生はここにいられる期限をボソッと口にした。それは、例年と変わらないしかし、めぐみが一番心配してることは期限の話ではなかった。



「うんうん、違うの……の方……」



そのという言葉に龍生は、過剰反応した。それは、昨年本土の学校からこっちへ来た生徒が自分の不安を最初に口にした時とほぼ同じ言葉だった。



「安心しな、この島に住んでれば滅多に襲われることねぇから。」



そう言い残して龍生は、部屋に戻りベットに身を預けた。右腕で目を覆い隠すようにして彼は、ある考え事を思い出していた。それは、過去の記憶……。


三年前、家族と沢山遊んでいた日常が突然奇形生命体によって崩壊したあの時の記憶……。

そして、己の心の傷と復讐から生まれた彼の超能力は、昨年ある人によって正しい使い道を教わった。その人物が昨年本土から来た交換生徒、瀧澤 芽衣たきざわ めいだった。同時に黒峰 龍生の初恋の相手でもあった……。


龍生は、身体を横に向けて近くにある写真立ての中にある一枚の写真を見つめた。そこには、瀧澤 芽衣とツーショットの写真だった。



「芽衣、また来ちまったよ……この時期が……。」



龍生は、そう悲しい表情で今までより優しい声で呟くとそこに写っている芽衣に優しく触れた。

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ABILITY WORLD 銀河 流星 @ryusei2000

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