ABILITY WORLD

銀河 流星

東宮諸島編

第1話「始まりの島」

2020年、本来なら東京でオリンピックが行われる年だが、それどころではない。

今から三年前……、環境破壊によって自我を持った植物や動物が誕生して、次々と人間を襲い始めるという事件が多発した。



「なんで、私だけが転校しなければならないんですか!?それも本土から離れた東宮諸島とうきゅうしょとうに!?」



校長室では肩までかかる髪を後ろでまとめている茶髪の女子生徒が校長に文句を言っていた。彼女は、都立第三高校二年の北川きたがわめぐみ。成績優秀で容姿端麗な女子生徒で、今作のヒロインだ。



「我が校と東宮学園は、昔からお互いの優秀な生徒を交換学生として送り出す決まりでね。今年は成績優秀な北川君にお願いしてるのだが……ダメかね?」


「嫌です!だって、東宮諸島って奇形生命体の出生地じゃないですか!」



東宮諸島……人口が増大した日本にとって救いになる奇跡の島と呼ばれていたが、自我を持った奇形生命体の誕生により、それが一変した。今は、集団で行動するようになったため被害が減ったと言う報告が来ているが、安全とは言えないのが現状だ。



「もう既に君の名で向こうの学校へ提出してしまった……今更、変更出来んよ。」



そう言われると何も答えられなくなっためぐみは、渋々了承した後に帰宅すると、荷造りをして準備した。多少の文句も言いながら時だけが過ぎて出発の時間となった。めぐみは、スーツケースの取っ手を力強く握り、家を出た。

東宮学園のある東宮諸島には、船で三時間で移動する。そのため、港には東宮学園の校長が出迎えてくれるらしい。



「うわぁ!東京みたい!!」



到着しためぐみは、目の前に浮かぶ街の光景を見て興奮していた。都会よのうなビル群の街、東宮諸島の中心に位置していてまさにシンボルと言える島、都島みやこじまがこの島の名前らしい。



「ハロー!良く来てくれたね、ミスめぐみ。」



ある人がめぐみの後ろから声をかけた。それと同時に振り返っためぐみの前には中年のガッチリ体型に少し白髪の混ざった男性が立っていた。



「すみません、貴方は……」



めぐみは、怪しい人と話すように男性へ質問した。すると、男性はハイテンションな態度で彼女の質問に答えた。



「おっと、まだ自己紹介してなかったね。ミーの名は、白木 哲郎しらき てつろう。明日から君が通う東宮学園の校長だ!これから宜しくね!」



そう言って白木校長はめぐみに握手を求めてきた。最初は、躊躇っていためぐみもゆっくりと手を出して握手を交わした。

その後、めぐみは白木校長の車に乗り「白馬荘」と言う学生寮へ向かっていた。そこは、まるで家のような建物でこの辺では極めて珍しい。



「後は、この寮を担当している戸山寮監が仕事してくれるだろう。それでは、グッバーイ!!」



そう言い残して白木校長は、めぐみを置いて去ってしまった。めぐみは、疲れたと言わんばかりのため息をこぼすと、数多くの不安を思い描きながらスーツケースを引いて白馬荘へと入っていった。





めぐみが東宮島に到着した頃、林などの自然豊かな街、東宮諸島第二の島(以後、自然島しぜんじま)では、人並みの大きさをした巨大グモ(以後、奇形グモ)の目の前に立つ一人の少年がいた。彼の髪は高校生とは言えないぐらいに明るいオレンジっぽい茶髪とやけに大人びた顔をしていた。



「ったく、久々の人の休日を良くもまぁ邪魔してくれるじゃねぇーか!」



頭をボリボリ書きながら呆れた態度で少年は言った。すると、奇形グモは、ゆっくりと口を動かして喋り始めた。



「それは、お前達人間が悪いのだろ?それに、お前だっての方ではないのか?」


「確かに……だが」



そう呟くと、少年は次の瞬間、奇形グモの後ろに立っていた。常識的に考えて有り得ないスピードは、まさに超人的と言っても過言ではない。そして、彼の右手は刀身を血塗られた大刀の柄をしっかり握っていた。



「俺は……だ。」



そう言い残して少年は、大刀を背中にある鞘にしまうとその場から立ち去った。すると、奇形グモは灰となって消えていった。

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