出ない!出ない!子供が出ない!!

ちびまるフォイ

出せよSSR!じーくじおん! \ジークジオン/

「私、子供は1人欲しいな。いっぱいいると愛情が分散しそう」


「ふふ。そうか、それじゃあさっそく子供を作らないとな」


「あ、でもあなたとの子供はいらないわ」

「えっ」


「子供は欲しいけど、あなたの子供はいらない。もっと優秀な子をガチャで引くわ」


「ちょっとまって何言ってるかわからない」


「子供ガチャ。知らないの?」


妻はスマホのアプリ画面を夫に見せた。

夫はことにスマホ事情に関してはうとかったので目を白黒させる。


「もともとは、子供が授からない夫婦のためのアプリだったけど

 どうせ生まれてくる子供は優秀な子がいいじゃない?

 だから私もガチャから子供がほしいの」


「それ……自分の子供って言えるのかい」


「ひどい!! 血はつながってなくたって、私たちの子供は子供よ!!」


「なんで俺が悪い感じになってるの!?」


夫の了承も得たところで妻はガチャを引いた。



「……SRだわ」


「レアなのかい」

「うんこよ」

「ええ……」


「引き直すわ。こんなんじゃ将来が思いやられるもの」


妻はすぐにガチャを引き直したが結果はかんばしくなかった。



「……Nね」


「いいものなのかい?」

「あなたくらいの価値よ」


「それはいいじゃないか!」


夫の感動をよそに妻はすぐに引き直した。



「R」

「SR」

「R」

「N……もういい!!!」


妻は怒ってスマホを投げてしまった。


「いったい何を怒ってるんだい」


「何回やってもSSRが出ないのよ!! 詐欺じゃないの!?」


「SSR……?」


「スペシャル・スーパー・レアよ!! 最高レアリティ!

 この子供が出ないと、ほかの人に差をつけられないわ!!」


夫は知るよしもないが、今じゃみんな子供はガチャで出す。

SSRの子供をもつ親はほぼいない。


「ちょっと苦情つけてくる!! きっと詐欺なのよ!」


妻はヒステリックになってアプリ運営に直談判した。

結果は"詐欺はしてません"の一点張りだったのでますます拍車をかける。


「そんなこといって! 祭りのくじびきみたいに実はあたりがないんでしょう!?」


『そんなことありません。ただただ出ないだけです』


「ええ、いいわ!! それだけ言うなら私が試してあげる!!

 何十回、何百回も引いてあげるわ! よかったわね!!

 でも、それだけ回しても何も出なかったって言いふらしてやる!!」


「お、おいもうその辺で……」


「あなたは黙ってて! これは女の問題よ!!」


妻はやっきになってガチャを引きまくった。

溜めていた結婚式の資金を切り崩し、土地を売り、お金を借りた。



「どうしてこれだけ引いても出ないのよ!!!」



ますます妻は怒る。


「その……SRでもいいじゃないか?

 育て方しだいでSSR以上にもなりそうだし……」


「あなたはなにもわかってない!! 努力値と種族値があるのよ!!

 SSRの子供を手に入れないとなんの意味もないわ!!」


「でももう貯金も……」


「くどい!! あなたは黙ってiTumeカード買ってくればいいのよ!!!」


夫は家から出かけた後、戻ってくることはなかった。

それでも妻にとってはどうでもいいことだった。

妻の目はガチャの結果画面にくぎ付けになっている。


「来い来い来い…………お願いだから……」


貯金を失い。借金を背負い。

それでも一発逆転の子供を手に入れるためにガチャを引く。


そしてついに……。




「や、やったぁぁぁ!!! SSRの子供が来たわぁぁぁぁ!!!!」



妻は大喜びではしゃぎまわった。

手元には何も残ってないが、高レアの子供を手に入れた。


「はじめまして、私が今日からあなのママよ♪」


これから始まるバラ色主婦生活を想像しながら妻は話しかけた。





「うっわ、借金まみれの親かよ……ハズレだな」


子供は親ガチャを引き直して、別の親元をあたった。

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出ない!出ない!子供が出ない!! ちびまるフォイ @firestorage

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