小鳥は怪物に見つからない

作者 陽澄すずめ

75

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★★★ Excellent!!!

少女のまま眠り続ける三歳下の従妹を十年ものあいだ見守ってきた主人公だが……。

鳥籠。小鳥。怪物。そしてタイトルでもある『小鳥は怪物に見つからない』という、眠りにつくまえの少女の言葉。

象徴的に描かれているこれらのキーワードをどう受けとるか。はたしてほんとうに鳥籠にとらわれているのは誰なのか。そこに閉じこめたのは過去なのか。それとも、未来なのか。

誰も悪くないはずなのに背負わずにはいられない罪悪感。誰も責めることができないやるせなさ。きれいごとではすまされない現実。切なく苦しく、けれど途方もなく美しい別れの物語。ぜひ読んでみてください。

★★★ Excellent!!!

 眠ったままの少女を献身的見守る主人公の物語。
 題名の「小鳥は怪物に見つからない」は少女の口癖だった。
 時が止まってしまった少女。
 しかし主人公の時間は止まらない。
 主人公が少女にプレゼントした鳥籠入りの小鳥。
 二人の約束。
 しかし、約束は守られなかった。
 何故、主人公は二人で交わした約束を違えたのか――?
 そこには主人公の葛藤、軋轢、猜疑が読み取れる。

 少女は言う。
――あの鳥籠の小鳥はわざと逃がしたの。

 二人の会話、関係性、時間の流れ。
 その全てが切ない一作。

 是非、是非、御一読ください。

★★★ Excellent!!!

外には怖い怪物がいる。そう由衣子は語り、籠の中の小鳥を病室から出られない自分と重ねていた。
では、この怪物とは一体何なのか。それは劇中では一切明言されておらず、寝たきりの少女にしか分からない。
しかし、一向に寝たきりから回復することのない従妹と関わる中で、主人公はうっかり見つけてしまった。と言うよりも、ついに気付いてしまったのかもしれない。
自分の内側に潜む優越感、もしくは他人を見下すことでしか保てない自尊心、さらに由衣子を見捨てることを無意識に肯定しようとする己の心の汚さこそが、怪物の正体なのなのかもしれないと。
外側ではなく内側にこそ、本物の怪物が蔓延っていたのだと。
それを知り、約束を破る覚悟を決めた主人公は、何を思って大切『だった』人に背を向けたのか。
そんなように、人が持つ内面というものに対して様々な考察をすることができる良作。

★★★ Excellent!!!

五千文字にみたない切りつめられた文章のなかに、かなしくもうつくしい別れの物語がおさめられています。
読後にのこされた余白になにを描くべきか、そうかんがえるとき、すでに読者はこの物語という鳥籠のなかの、一羽の小鳥になっているのかもしれません。
僕と由衣子さん、たったふたりの登場人物と、小鳥と鳥籠、そして怪物という、みっつのキーワード。はたされない約束と、別れ。あなたはこの物語を、どんな風によみますか?