それから
同棲していた物件の不動産会社から電話があったのは、圭子が家を出てから3ヶ月経った頃だった。
「解約届受け取りました。それで…解約立会い日について和田様にご連絡をしてるのですが、1週間連絡がなくて高村様にお電話したんです。家賃もまだ振り込まれていなくて」
和田というのは、光太郎のことだ。一瞬、嫌な予感がした。
判りました確かめますと電話を切り、LINEを開く。
メッセージを打とうとして、手を止めた。
(いまさら)
今日が3連休の中日であることに気づく。
光太郎のことだから、また海外旅行にでも行っているんだろう。自殺なんてする訳ない。人はそう簡単には死なない。
(もう連絡しないって決めたんだから)
圭子はもう、光太郎に連絡すべきではないのだ。
LINEアカウントを左にスワイプし、削除をタップした。
1週間経ち、それから不動産会社から連絡はない。無事に引っ越しは完了したのだろう。
季節はすっかり秋だった。今年は夏らしい夏がないまま季節が移っていった。
光太郎と圭子の人生は、今後もう交わることはないだろう。
「いつか戻る場所」は永遠に失われた。
一人に慣れていく。
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久しぶりにFacebookを開く。共通の友人がfacebookにアップロードした写真に、光太郎が写っていた。
光太郎の顔を見たのは、3年ぶりだ。
かつては圭子も光太郎とよく訪れた居酒屋での集合写真だった。
光太郎の横には、圭子が知らない女性が寄り添い、二人を囲むように知り合いたちが並んでいた。
よく見ると、ピースサインをしたその女性の指には指輪が光っていた。
よかった、と素直に思った。
心からそう思えたことに、安心した。
トーキョー・マリッジブルー 街子 @tokyomidnightlovers
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