朝が来なければいいのに

なぜ、潤の指はこんなにも的確に快感を与えるのだろう。


経験人数は、少なくない。それなりに遊んできた女性の中の、平均値程度だと自覚している。

光太郎と別れてからは、彼氏もワンナイトの男もいたし、ある程度長期的に続いたセフレもいた。

でもその誰よりも、潤とのセックスは気持ちいい。


セフレ−Sex freiendとは不思議な言葉だ。肉体関係のある友人、なのか、肉体関係がある恋人ではない人間、なのか。両者は同じようで全く違う。


昔、生理のときにも会うのが彼氏で、会わないのがセフレだというのを聞いたことがある。

そういう意味なら、セフレとは肉体関係のある恋人ではない人間に過ぎず、友人ではないのだろう。

潤とは生理のときも会うが、どうせならセックスできる日に会いたいと思う。


「圭子は感度いいよね。気持ちいい」


厚い胸板に手をついて、圭子は潤の体に馬乗りになる。前後に擦り付けるように動いて、自分の気持ちいいところに当てた。


潤との挿入行為は、どんな体位でも快い。体の相性が合うのだと思いたいが、実のところは単に彼が女の肉体に慣れているからに過ぎないということを理解している。

無駄な台詞を吐かず、興奮を正しく煽るためだけに喋り、キスは惜しまない。


「ん…ダメ、もう動けない」

「こっちおいで」


圭子の身体を抱き寄せながら、下から激しく突き上げられる。

快感に呑まれながらも、体温と鼓動を身体全体に感じてうっとりとする。


射精を終え避妊具を外した潤は、ベッドに潜り込んで圭子をゆるく抱きしめた。うっすらと汗をかいた肌からは、性的興奮の余韻が残る雄の匂いがした。


気づけは、二人ともそのまましばらく寝ていたようだ。

光太郎は金曜日から海外出張で留守にしている。今日はこのまま潤の自宅に泊まる。


「こうやって、一緒に眠れるのもしばらくないと思うと不思議な感じ」

切ない、とは言えなかった。


週末に光太郎の出張が運よく被ることはそう多くはない。先週は勢いでしてしまったが、夜遊びだと言って外泊するのも限度がある。


「朝が来なければいいのにな」

「圭子、明日は朝ごはん一緒に食べよう」

「うん」


ファッション雑誌”With”の今月の特集は「結婚できるSEX」だった。

字面だけでも相当なインパクトだ。発売直後から波紋を呼び、Twitterの一部ではこの話題で持ちきりだった。

圭子は発売日当日に買った。まだ内容は読んでいないが、タイトルについて考える。


結婚できる、セックス。


婚約者に抱かれるのを避け、別の男と体を重ねている自分。

すべての恋愛とセックスのゴールが結婚なら、なんてシンプルなのだろう。

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