閉店
おや、もうすっかり雨が止んでいました。少し、長く語りすぎてしまいましたね。お時間とらせて済みません。
彩﨑さんは先にお帰りになられましたよ。その代わりに……
「旦那! お茶のおかわりおくれ!」
「おくれ! 早うおくれよ!」
煩いのが二匹ほど、勝手に上がり込んできました。
「うるさいとはなんだい、うるさいとは」
「そうさ。俺たちの話をもっとしておくれよ! さぁ、さぁ!」
あー……煩い。私もよく「煩い」と言われますが、こんな風じゃないと思いますよ。はぁ……。
さて、ここまで如何でしたでしょうか。まぁ、他愛もない小話に過ぎないのですが、これを経て今があります。
この話し方もすっかり慣れてしまいましたね。まさに商いは吉相。これも商売道具といいますか。なかなかに便利なんです。
他にもあれやこれや厄介ごとがあったのですが……また別の機会に。
「ところで旦那よ」
えっと……青いから右吉か。なんですか。
「青は左吉だい! まったく! ……それで旦那。あの時、どうして急に態度を改めたんだい?」
………。
「やや? 黙りこんじまったぞ」
「あ、分かった。さては中星様が怖かったんだな!」
「さっすが右吉。成る程、そういうことかぁ」
「おっかないもんなぁ、中星様は。でも、あの時は雨で済んで良かったよ。一度、雷を落っことしたことがあるんだから」
「あったねぇ……」
「おや、旦那。顔が怖いですぜ」
……茶を飲んだらとっとと帰れよ、お前たち。さもなくば、
「ひぇっ」
「おっかないわぁ……ゲンコツは嫌だ」
「勘弁してくだせぇ」
……あぁ、済みません。お見苦しいところをお見せして。
こんな風ですが、関係は良好なんですよ、これでも。
狐と縁を結んだのは、悪いどころか良いことずくめで。
しかし。
先日にもまた大きな取引をしたんですが、こっちはえらく高値でしたね。とんでもないものを要求されました。いやぁ、本当、あの方は恐ろしい。
それでは、そろそろ店じまいと致します。お引き止めしてしまい、申し訳ありません。
何か、お気に召す品がございましたら、遠慮なくお申し付け下さいね。
またのご来店、心よりお待ちしております。
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