火曜日には「何がうまくいっているのか」考えたこと。

   2017年5月23日(火曜日) 動画サイトアップロード予定原稿。


 こんにちわ。今週もエルムバンクチャンネルにアクセスしてくれて、どうもありがとう。

 お片づけについて発信し続けているエルムバンクチャンネルもおかげさまで1周年です。私がプロフェッショナル・オーガナイザーになってから17年。みんなに支えられてきたんだなー!って本当に思います。本当、2000年に、この仕事を始めたばかりの頃は、イギリスにお片づけの需要がこんなにあるなんて気づいていませんでした。この一年は日本語で発信していて、あ、同じ情報は日本にも必要とされているんだなって、ひしひしと感じています。

お片付けは愛と秩序ですからね。きっと、どこでも必要なものなんでしょう。


 さて、今日のトピックです。予告した通り「汚い部屋の中でも考えること」です。  


 みなさんからいただくメールには大抵「うちはものすごく散らかっているんです」だとか「足の踏み場もない」みたいなことが書いてあります。私のクライアントさんも、同じことをおっしゃいます。オーガナイザーを呼んでくださる方は普通、危機感を持ってらっしゃる方なので、悪いところが一番目につくんですね。


 でも、最初の下見が終わった段階で、私が必ずクライアントさんと相談するのは、何がうまくいっていないかより前に、「何がのか」なんですねー。歯磨きは歯ブラシを探さずにできる、だとか、そんな感じの基本的なことです。「え、そのレベルでいいの?」って思われるかも(笑)でも、散らかっているところは、私でも見ればすぐにわかるので(笑)の聞き取りは欠かせません。


 エルムバンクに連絡をくださるクライアントさんは大抵、すでに結構おうちが散らかってます。で、散らかるのには普通、ちゃんとした理由があります。これは先週お話ししましたね。おうちが散らかる4大原因って。覚えてますかー? 覚えてないかな?


 えーっとじゃあ、復習しましょうか。まずは「機械的原因」——戸棚のドアが開け閉めしにくいとか、そのレベルのことでも家は散らかります。嘘だと思うかもしれませんけど、引き戸の滑りを良くするシリコンスプレーはプロフェッショナル・オーガナイザーの七つ道具の一つですよ。まだお持ちでない同業者の方、大急ぎでお店へGo! です。

 それから「感情的原因」——思い入れがあるものが多すぎるとか、いろいろですね。ここにある参考写真を見ていただくとわかるんですが、この方は、お年をめして、小さなおうちに引っ越したにもかかわらず、亡くなった奥様のお洋服をどうしても捨てることができずに、自分のものがちゃんとしまえない状態になっていました。

 やっかいなのが「状況的原因」——離婚や死別、引越しや……そうそう、結婚だとか赤ちゃんが生まれた、なんていうのもここに入りますね。とにかく生活の仕方が急激に変わるケースです。あ、先ほどの奥様の死別のケースなんかは、ここにも入りますねー。大変な場合は一時的なシステムを作って、状況が落ち着いた頃に調整をするなり、新たな収納システムをつくるなりしなくちゃいけなくなります。

 そして最後に「システムの原因」——いつもお風呂に入る前に服を脱ぐのに、脱衣籠が風呂場じゃなくて寝室にあるようなケースです。ついつい脱いだ服が風呂場に溜まっちゃう。日本だと洗濯機が風呂場にあることが多いのですが、イギリスだと台所にあることが多いので、脱衣籠の位置が悪いと、脱ぎ捨てた服があちらこちらに散乱します。人間って、基本的に面倒臭がり屋ですからね。

 で、事態が悪くなる場合は大抵、上の四つの原因が重なっちゃってます。「離婚して引越ししたらキッチンの戸棚が一箇所立て付けが悪くて開け閉めが面倒くさいなと思っているうちに、本来戸棚にしまうはずだったお皿がリビングルームの棚にぽいと置かれるようになってしまった」みたいな感じを想像してください。プロフェッショナル・オーガナイザーを名乗るんだったら、これをうまーくときほどいて原因解明しなくてはならないんですが、今日は違った方面からのアプローチのお話です。



 今日のトピックは家が本当に混乱状態になっていても、大抵何か一つぐらいは「うまく行っている」ものがあるはずだって、お話です。さっきも言ったように歯ブラシだけはちゃんと見つかるとかね。これ、すごく重要です。だって、ちゃんと原因があって散らかっているのに、それでも一箇所だけ片付いていたりするわけですよ。すごいことじゃないですか?

 オーガナイザーの仕事の一つに「できるだけ早くにを見極める」っていうのがあります。これは二つの意味で大切なんです。

 まず、せっかくうまく回っているところに手を入れちゃうと、当座はいいけれど、オーガナイザーが帰った後、かえって家が散らかってしまう可能性があるということ。高いお金を払ってオーガナイザーを雇って、新しい収納システムを作って、1週間でちらかりました、では、オーガナイザー失格もいいところです。他人が見たら非合理的に見えても、クライアントさんにとっては合理的なやりかたって、やっぱり時々存在するんですよ。なので、やはりそこは尊重することが大事です。


 そしてもう一つ!

 ここが今日のポイントですよ!

 「今うまくいっている場所」を特定するのが、とっても大切であるもう一つの理由は、じつは「今うまくできること」に「クライアントさんがうまく扱える収納システム」についての、大きなヒントが隠されているからなんです。

 たとえば、私がこの仕事を始めたばかりの頃にお伺いしたおうちは、お年をめした女性が住んでいらしたんですが、とても散らかっていて、生活空間がほとんどないような状態だったんですね。で、そこの住人の方は、小さなトランクの中に生活に必要な最低限のものを詰めて生活なさってらっしゃいました。服が何着かと洗面用具が入っていたんですが、他の何もかもがめちゃくちゃでも、そのトランクの中はきちんと整理がされていたんです。

 凄いことですよね。家中ごっちゃごちゃなのに、毎日使っているトランクの中がきちんと整頓されている。

 理由が気になりませんか?

 私はめっちゃくちゃ気になりました。

 一緒にお片づけをしていくうちに気づいたんですが、どうやら彼女はそのトランクを「自分のスペース」だと強く認識していたようでした。

 つまり、「片付けなければならないモノの絶対量が少ない」ということと「整えているのが自分のスペースだと感じられること」が、このクライアントさんにとってはとても大切だったんですね。実はご両親の残された家に住んでいらっしゃる、ということは、最初から知っていたのですが、もしかしたらずっと「自分の家」ではなく「両親の家」だと思っていらしたのかもしれません。こうした自分のスペースに対する見方って意外な形でお片づけの仕方に影響を与えることがあるんですよね。

 他にも、綺麗な木製のタンスに入れてあるものだけはきちんと整頓されている人だとか、本棚だけは整理されている人だとか、いろいろなケースがあります。皆さんのおうちやオフィスにもきっとはっきりとした理由がないのに「片付けやすい場所」と「片付けにくい場所」があるのではないでしょうか。

 

 一体、クライアントさんは何の片付けを「簡単だ」と感じているのか。あるいは「片付けている」という意識さえなく、何をきちんと整った状態に置いておけるのか。そして「なぜ」そこだけは片付けることができるのか。

 それを見極めるのも、プロフェッショナル・オーガナイザーのとっても大事な仕事の一つなんです。だって、ご本人は意識していないことが多いですからね。



  さて、今日はここまで。日本のオーガナイザーの皆さん、また来週! あ、そうそう。プロフェッショナルオーガナイザーの服装の心得は——覚えてらっしゃいますね。「汚れの目立たない色」! 服についたお片づけの汚れをクライアントさんに見せちゃうようではまだまだですよー。心配されちゃいますからね。「汚れちゃって、ごめんなさい」なんて絶対に言わせちゃなりません。

 ということで、愛と秩序をクライアントさんのお宅へお届けするエルムバンクお片づけサービスから、カーキ色のワンピースで、私、マキカがお送りしました。




 

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