虎はなぜ強いのか?もともと強いからだ

 『花の慶次』の有名な台詞に「虎はなにゆえ強いと思う?もともと強いからよ」というものがあります。最初から強い生き物は、鍛錬などしなくても他の生物を圧倒してしまう。食物連鎖の頂点に位置する生物とはそういうものです。


 翻って、ウェブ小説界における強者とは何か。評価という観点から見れば、それは☆やポイントをたくさん集める作品です。☆がたくさんついている作品は、もちろん最初は何か人を惹きつける要素があったからそうなっています。

 ですが、あるラインを超えると、まさに☆が多いからこそ「きっとこれは面白いのだろう」と読者が思い、それによってさらに読者が増えて☆が集まる、という現象が起きているように思います。☆が☆を呼び、読者が読者を呼ぶというスパイラル現象が起こります。


 これを逆から見ると、埋もれている作品が埋もれたままなのは、まさに埋もれているからです。☆が少ないことによって新たな読者の興味を引くことができず、埋もれたままになってしまうということです。この状態からの逆転は容易ではありません。

 このため、小説家になろうでは「ランキング上位から落ちたらその作品は諦めて新作を書くべき」とアドバイスする人もいます。

 強者は強者であることによってさらに強くなり、弱者は弱者の位置に留まる、なんだかトランプの大富豪のようです。あれは本当によくできたゲームだと思います。


 よく知られた心理効果に「ハロー効果」というものがあります。これは後光効果とも言われますが、良い肩書や権威を持っていると自然と相手の評価が高くなる、というものです。ウェブ小説において☆やレビュー数などもひとつの権威になりえます。☆が多いことによって中身までよく見えるのなら、当然☆が少ないと逆の効果が働いてしまいます。


 私などは☆の多い作品を見るとみんな褒めてるんだからこれ以上褒めなくていいだろう、と思うことがありますが、こんな天邪鬼な人は少数派です。

 やはり多くの人は評価されているものを読みたいし、そもそもプロの作品とは違いあまり信頼のないウェブ小説界ではさらに周囲からの評価という要素が重要になってきます。読まれる作品はさらに読まれ、読まれない作品はそのまま、ウェブとは本当に厳しい世界です。


 強者は強者であることでさらにカードを得ることができるのが大富豪です。しかし時に革命が起き、弱者と強者の立場は入れ替わります。革命ルールが存在しない以上、ウェブ小説界は大富豪よりも厳しい世界と言えそうです。

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