テンプレ作品の冒頭の強さ

 最近、試みに転生もの(異世界転生ではなく異世界の人間がその世界で転生するもの)を書いているのですが(まだ公開はしていません)、自分で書いていても書きやすさを実感しています。何を書けばいいのか迷いませんし、主人公の独自スキルを幾つか設定しているうちにこういうのも案外楽しいかもしれないな、と思えてきました。


 やはり流行るものにはそれなりの理由があります。

 作者の側からすれば冒頭で悩まなくていい、これはかなり強力なメリットです。

 何しろ、小説の冒頭というのは一番気を使う部分です。ここで読者の心をつかめなければ、その後は読んでもらえません。しかしテンプレに沿えば、ここの悩みがかなり解消されるのです。


 主人公に何かしらのクエストが与えられる、というのが物語の基本形です。

 異世界に転生すれば、まずその時点で「どうこの世界でサバイバルすればいいのか」というクエストが自動的に発生することになります。これがテンプレの強さです。やはり物語の形式として非常に強いために、多くの作者に用いられてきたのだと思います。


 ただし、強すぎるがゆえに、異世界転生の物語がほぼウェブ小説界では一強状態であることも否めません。

 何事にも流行はありますし、書籍化を目指すなら流行をにらみながら書くことも大事であることは確かです。

 ただ、どんな流行も永遠には続きません。もし転生物が流行のスタイルでなくなった場合、今度は作者は独自の冒頭を用意して読者を引きつける努力をすることが求められます。ノベルゼロのコンテストは異世界転生が禁止されたことで話題を呼びましたが、このコンテストではどう独自の工夫をして読者を惹きつけるか、作者の真価が問われることになると思います。

 その意味では、今光が当たっていなくても、非テンプレの作品を書いている方のほうが鍛えられているのかもしれません。


 テンプレが強いのには強いだけの理由がありますが、いつまでも同じものを使い続けられるものではないことも確かです。私は転生物がすぐに廃れるとは思っていませんが、そうした作品が流行らなくなった世界で作者がどう自分を売り込んでいくのか、ということも考えていく必要があるのかもしれません。

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