報われる世界観と「レベル」の概念
これは私の感覚が古いからですが、少し前までは、小説の中にレベルやステータス、固有スキルなどのゲームのような概念が出てくることに抵抗がありました。
ウェブ小説のファンタジーにはそういうものが多く、そのせいでそうした作品を敬遠していたこともあります。
ですが、最近カクヨムの人気ファンタジーを読んでいて、読者を惹きつける上ではこうした概念はかなり有効なのではないか、と思うようになってきました。
私達がゲームに夢中になるのは、ゲームの中で細かいご褒美が用意されていて、プレイするモチベーションを掻き立ててくれるからです。
ファンタジーRPGではモンスターを倒すとレベルが上がり、ステータスが強くなって新しいスキルを覚え、戦いがより容易になり、ストーリーを先に進められる……というサイクルを繰り返しつつ、ゲームを進行させます。
この流れを、多くのウェブ小説でも取り入れています。
戦うことで強くなり、どれくらい強くなったのかがステータス画面で示され、覚えたスキルの内容も逐一作中で解説されます。
もちろんスキルは実戦で活用でき、作中で気持ちよく活躍するための手助けをしてくれます。
こうしたゲーム的な作品は、そうでない作品に比べて読者にとってのご褒美が明確で、成長の度合いもはっきりと数字で表されるので、「努力が報われている」という感覚を感じやすいようになっています。
私達の生きる現実世界は、努力しても必ずしも報われません。
RPG的な世界観では努力は経験値として蓄積され、それがレベルの向上や新規スキルの獲得に結びつきます。
不条理なことの多い現実に比べ、これは「優しい世界」です。
努力して得られたものがはっきり数字として現れる、というゲームの強みを、ウェブ小説でも活かす流れになっています。
そう考えていくと、ウェブ小説、中でもこうしたゲーム的な要素を持つ作品というのは、ある種のスマホゲームに近い感覚で楽しむものなのかもしれません。
ウェブ小説のPVを増やす方法として毎日更新するというものがありますが、これもブラウザゲームでログインするたびにボーナスがもらえるようなもので、毎日見に行くたびに更新されているという明確なご褒美があるので読者がついてくる、ということだと思います。
翻って作者の立場を考えてみると、せっかく書くのだから、やはり努力が報われるものを書きたくなります。
好きなことを書いていいのが創作の魅力ですが、一方、☆やレビューなどのご褒美がなかなかもらえなければ更新するモチベーションも下がります。
自然、ご褒美をもらえやすいテンプレ的な作品を多くの人が書きたがる、ということになります。
ゲーム的なファンタジーの中でレベルアップやスキルの獲得といった明確なご褒美がしばしば用意されるのは、何の報酬もない状態で書き続けることの辛さを作者自身がよく理解しているから、なのかもしれません。
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