ウェブとお仕事小説の相性

 現在カクヨムでは「働くヒト」小説コンテストが行われていますね。

 私もレビューを入れた作品があります。普段は知ることのできない仕事の実態を知ることができるのがお仕事小説の魅力です。


 ところで、お仕事小説とウェブ投稿サイトとの相性はどういうものでしょうか。

 このことを考える時、『ダイブ!~潜水系公務員は謎だらけ~』という作品のことを思い出します。

 この作品は小説家になろうとマイナビbooksが主催した第二回お仕事コンテストで特別賞を受賞し、出版に至った作品です。


 書籍化するほどの作品なのだから、小説家になろうでも高評価だったのだろうと思われるかもしれません。

 ですが、この作品はなろう内ではなんと53ptしか評価されていなかったのです。

 小説家になろうでは100ptを獲得できたら底辺脱出、と言われることがありますが、そのラインにすら届かなかったわけです。

 プロが出版できると判断するほどの作品ですら、ウェブでは低評価に甘んじてしまうことがあるのです。


 ウェブ小説を分析した書籍の目次に、「ウェブ小説の読者は異世界で人生をリスタートしたい」と書かれているのを見たことがあります。

 その願望を実現できるからこそ転生物語がテンプレとして受けているのでしょうが、そうした読者と現実そのものを描くお仕事小説とでは、全くマッチングが成立していないということになります。

 だから書籍化できるほどの作品でも読者の興味を惹かなかったのでしょう。


 もっとも、中身はお仕事小説でも、パッケージが異世界ものならもっと読まれる可能性もあります。

 なろうの有名作品で『冒険者パーティーの経営を支援します!!!』という作品がありますが、こちらは冒険者を支援する事業を立ち上げるというストーリーで、私が読んだときは総合評価は69,995ptでした。

 仕事の内容は大きく異なるので『ダイブ!~潜水系公務員は謎だらけ~』と単純な比較はできませんが、チートも何もない地味な内容でも舞台が異世界なら人気作品になり得ます。

 改めて、異世界ものというジャンルの強さを思い知らされました。


 カクヨムは小説家になろうとは雰囲気も違うので、お仕事小説ももう少し読まれるような印象はありますが、サイトそのものを引っ張るほどの力があるものが出てくるかどうかはわかりません。

 このあたりは「働くヒト」小説コンテストの行方を見守りつつ、考えていきたいと思います。

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