埋もれた名作なんて存在しない?

 これまでずっと、この文章では「埋もれた名作は多い」という前提で書いてきました。ですが、何を名作と定義するかによっては「そんなものは存在しない」と考えることも可能です。私はその立場は取りませんが、今回はあえて逆に考えてみます。


 結局のところ、何を良い作品と評価するかは主観の問題になります。

 ですが、作品を書籍化するとなると、ウェブの段階で数字を獲得している作品が有利となります。

 カクヨムコンテストでは読者選考があるのである程度は☆を稼いでいなければここを通過できませんし(それほどハードルは高くないようですが)、第1回カクヨムコンテストを見る限りでは、やはり☆をたくさん稼いでいる作品から順当に書籍化されていっているようです。


 出版はビジネスなので、読者数や☆の数はその作品に需要があるかどうかを発売する前にある程度判断できる重要な指標となります。

 つまり、出版する側から見た「良い作品」というのは発売前から人目を引き、ウェブに公開している段階で高い評価を得ているものということになります。

 この視点からすれば、埋もれている時点でそれは良作ではない、良い作品とは数字を集められる作品なのだ、ということです。

 

 高く評価されているものが良い作品、となるとなんだかトートロジーのようですが、売る側の視点からすれば売れ筋の作風で書けるか、いかにタイトルやあらすじなどで読者の気を引けるか、といったマーケティング能力的なものも含めて作品の評価になるわけなので、埋もれている時点でそれは商品としては弱い、ということになりそうです。


 もちろん、作品の価値と商品としての価値とはまた別です。ただ売るのであれば、ウェブに公開している段階から商品としての価値を問われます。そういう意味では、やはり今ウェブで受けるようなものを書ける人が強いことは間違いありません。

 

 ただし、以前も書いた通り、カクヨム公式アカウントで掲載されているプロの作品ですら埋もれている作品が存在します。これらの作品は出版されているので、商品として価値があると判断されたことは間違いありません。となると、ウェブの反応だけを見ていても商品としての価値も正確に捉えきれないのではないか、という疑問も出てきます。紙の書籍としてなら良い作品でもウェブとのマッチングが悪い作風の場合、現在の選考方式ではやはり埋もれてしまいそうです。そういう作品は一般の公募に出したほうがいいのかもしれません。

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