ウェブ小説は総合力では評価されていない

 前回と前々回の文章で、ジャンル選択が小説の一次試験、文章の読みやすさが二次試験であるという仮説を提示しました。

 繰り返しますが、ここで言う「埋もれている作品」の文章の読みにくさとは文章が下手ということではなく、文学的に凝った文章であるために小説を読み慣れていない人には読みにくい、という意味です。


 この二つの試験をクリアして、ようやく読者は内容の審査に入るわけです。

 つまり、この段階でつまづいてしまうと、内容自体のクオリティが高くても評価されないということになってしまいます。


 話を簡単にするために、小説の評価ポイントを3つに分解します。

 ここで評価されるのは文章(読みやすさ)・キャラクター・ストーリーの3つ。

 AとBの2作を比較しますが、この例ではジャンルは同じものとします。

 それぞれのポイントについて10点満点で採点します。


 A作品は文章が8、キャラクターが5、ストーリーが6。

 B作品は文章が5、キャラクターが7、ストーリーが9。


 総合すればAは合計19点、Bは合計21点となり、総合力では後者のほうが高い。

 しかし、B作品は文章(読みやすさ)の点が低いため読んでもらえず、A作品よりもクオリティの高いストーリーが評価対象となりません。

 

 ここで言う読みやすさとは、小説を読み慣れていない読者から見た場合のものです。文章表現は練られているが難しい言葉も多く文字がみっしり詰まっているB作品と、語彙力は乏しいが文章が簡潔でするする読めるA作品では後者のほうが読みやすさの点が高いと想定しています。

 文学作品としてみれば文章力という点でも高く評価できるB作品が、スピーディーに読めないという特徴のためにスルーされてしまっている、というのが、私の「クオリティが高いのに埋もれてしまっている」作品のイメージです。


 ついでに言いますと、B作品のようなものは紙の書籍をイメージしているのか、行間をほとんど空けていない作品が少なくありません。

 私はいくらウェブでは読みやすさが大事だからとはいえ、せっかくの凝った描写を削ってしまうのはどうかと思っています。

 ですが、行間は工夫できる部分です。行間のない文章がずっと続くと、読者はどこで息継ぎしていいのかわからなくなってしまうのです。

 もちろん最終的には作者の方の自由とは思いますが、ここで読者を逃してしまうのは非常にもったいないと思うので、自作が読まれないと悩んでいる方には一度考慮していただきたい部分ではあります。


 話が逸れましたが、ジャンルという一次試験、読みやすさという二次試験をクリアできないと内容が評価されないため、せっかくクオリティが高くても内容を読んでもらえる所まで行き着いていない作品が多いのではないか、というお話でした。


 次回は異世界ファンタジーに話を絞り、ジャンルという部分についてもう少し突っ込んだお話をしたいと思います。

 一口に異世界ファンタジーと言っても、異世界に転生したり転移したりして何らかのスキルを授かり無双したりするようなテンプレ作品と、そうでない非テンプレ作品とではそもそも別ジャンルではないかと思えるくらいに異なっている、と思うからです。

 なぜテンプレ異世界作品がこれほどまでに多いのか、という部分にも触れていきたいと思います。

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